毎年の健康診断や学校検診の心電図で
「房室接合部調律」を指摘され、
ご不安を感じる方がいるかもしれません。
このページでは、
「房室接合部調律とは?原因は?」
「動悸と関係あるの?治療は?」
「症状はないけど、精密検査って必要?」
循環器専門医が、これらの疑問に対して
丁寧に解説いたします。
※本記事は診断や治療を目的としたものではありません。
※受診の判断材料や、理解を深める参考としてお使いください。
※検査元から受診指示がある方は、必ず医療機関をご受診ください。

本ページは下記:親ページの続編として記載しています。
よろしければ、最初から読んでみてください!
房室接合部調律の心電図と症状|動悸と関係?
房室接合部調律そのものでは、
多くの場合、特別な自覚症状がありません。
毎年の健康診断などの心電図検査で
偶然に見つかるケースが多く、
「経過観察」で問題ないですよ、
と判定されるケースが多いでしょう。
しかし、以下のような症状がある場合は注意が必要です:
- 動悸:「どきどき」や「脈が飛ぶ」を感じる
- 立ち眩み:「めまい」や「ふらつき」がある
- 動くと息切れがする
- 全身倦怠感がある
心電図は、あくまでも
「検査を行ったその一時点の心臓の状態」
を記録したものです。
そのため、健康診断などで
心電図に房室接合部調律と記載されていても、
それはあくまで検査時の結果となります。
日常生活の中で、自覚症状が出ている瞬間には、
一時的に頻脈や徐脈、他の脈不整が起きている
可能性も考えられます。
もし気になる症状がある場合は、
「健康診断後の心電図で
房室接合部調律と出ていたから大丈夫だろう」
と自己判断で済ませずに、
循環器内科または循環器科への受診をお勧めいたします。
✅健康診断の心電図で【経過観察】や【異常なし】…でも体調不良? それって病気?
心電図、房室接合部調律|原因は?
心臓のリズムをコントロールする
ペースメーカーの役割を担っているのは、
通常、洞結節(どうけっせつ)と呼ばれる部位です。
心臓は、上部の心房(しんぼう)と
下部の心室(しんしつ)に分かれており、
この心房と心室を繋ぐ場所が
房室接合部(ぼうしつせつごうぶ)です。
本来、洞結節は心房の右上の方に位置し、
心拍動の正確なリズムの指令を出しています。
しかし、この洞結節ではない部分、
具体的には房室接合部から電気信号が発生し
それが心臓全体の主要なリズムを
作ってしまう状態を、
心電図では房室接合部調律と呼びます。
これは例えるなら
本来の司令塔である洞結節とは別の場所、
具体的には房室接合部が
リズムの指令塔となってしまうことが
原因となって起きる現象です。
房室接合部調律の心電図|受診時のポイント
心臓の状態について
ご心配やご不安がある場合、
あるいは先に述べたような
動悸、息切れなどの気になる症状を感じる場合は、
循環器内科または循環器科の受診をご検討ください。
受診する医療機関を選ぶ際、
その公式サイトや医師のプロフィールに
以下のような専門資格の記載があれば
より安心して相談することができます。
- ◇◇循環器学会 専門医/認定医/所属
- ○○不整脈心電図学会 専門医/認定医/所属
上記のような専門資格を有する医師は、
心電図の異常を見分ける精度が高いと考えられます。
そのため、
単に心電図の結果を見るだけでなく
以下のような検査を
適切に組み合わせて診断計画を立て、
スムーズな進行を期待できます。
- 安静時12誘導心電図
- ホルター心電図(24時間心電図)
- 心臓超音波検査(心エコー)
- 血液検査
また、病状によっては
適切な治療を直ちに開始したり、
より高度な治療が必要な場合には、
専門の高度医療機関への紹介を
円滑に行ってくれるという点も期待できます。
医療機関へ受診される前に、
一度、クリニックや病院に
電話で連絡を入れておくことをおすすめします。
事前に予約方法や、
受診を希望される医師の診療日を確認しておくことで、
受付手続きや当日の流れがより円滑に進みます。
特に専門外来では
診察日が特定の曜日に限定されていたり、
担当医が限られている場合があります。
事前に問い合わせを行うことは
待ち時間の短縮につながるだけでなく、
予約に関する予期せぬトラブルを防ぐためにも有効です。
心電図、房室接合部調律|精密検査や治療はどうなる?
診察の結果、
「房室接合部調律」という心電図所見が、
- 対応が必要な重要な異常
- 経過観察で問題ない所見
かを判断するため、
通常は追加の検査が行われます。
先に挙げたような、
外来で実施可能な精密検査(心エコー、ホルター心電図など)が、
当日中、または2週間程度以内を目安に
行われるケースが多いでしょう。
検査結果が出た後の主なパターン
1.経過観察となるケース
軽度で心配不要な場合:
「特に心配はいりません。
症状が出たり、気になることがあれば、
その都度ご相談ください。」
念のための確認が必要な場合:
「○か月後に再度受診していただき、
もう一度、状態を確認しましょう。」
万が一に備える場合:
「▲▲のような症状が現れた際は、
救急外来を含め
直ちに医療機関を受診してください。」
2.薬物治療が始まるケース
状態に応じて、脈を整えるなどの
目的に合ったお薬が処方され、
定期通院・治療が開始されます。
3.専門的・高度な医療機関への紹介となるケース
より詳細な精密検査や、
身体への負担が大きい治療が必要と判断された場合、
急性期総合病院や大学病院、専門病院への
紹介が行われます。
紹介状を持って予約受診することになり、
そこで精密検査(電気生理学検査:EPSなど)や、
ペースメーカー植え込みといった
検査・治療計画が検討されます。
まれですが、極端な頻脈(脈が速すぎる)や
徐脈(脈が遅すぎる)などの所見が加わる場合、
緊急性が高いと判断され
当日中の受診や、
状況によっては救急搬送を勧められることもあります。
もちろん、
最初から総合病院を受診すること自体は問題ありません。
ただし、効率的な受診という観点からは
あまり推奨できない場合もあります。
大きな病院では、
以下のような理由から
時間や費用が多くかかる可能性があるためです。
- 初診時に紹介状がないと受診できない、または追加費用がかかる
- 待ち時間が長い
- 専門外来の予約が取りにくい場合がある
一方、地域のクリニックや医院は、
比較的早く診察を受けられることが多いです。
また、病状に応じて
大きな病院へスムーズに紹介してもらえる
「病診連携」の体制が整備されています。
このため、まずは
お近くの循環器内科や循環器科クリニックを受診し、
そこで専門的な検査や治療が必要と判断された場合に
専門病院を紹介してもらうという流れの方が、
結果的に効率的でスムーズに進む
ケースが多いと言えます。
スマートウォッチ心電図で房室接合部調律はわかる?
近年では、スマートウォッチにも
心電図を計測できる機能が
搭載されている機種が増えています。
これらの機器は、「脈が速い」
「脈のリズムが不規則だ」といった
心臓の拍動の変化を捉えるのに優れています。
しかし、スマートウォッチで把握できるのは、
あくまで「脈が速い・遅い・乱れている」
という大まかな傾向までです。
その具体的な原因が
「房室接合部調律」であるかどうかなど、
詳細な診断を機器の解析機能だけで
下すことはできません。
そのため、「心臓の動きがいつもと違う気がする」
「動悸を感じる回数が増えた」
と感じた際は、スマートウォッチの記録を
参考資料として持参し
必ず医療機関で
12誘導心電図やホルター心電図などの
精密検査を受けていただくことが重要です。
スマートウォッチは
あくまで「異変に気づくためのツール」です。
正確な診断は必ず医師に委ねましょう。
※執筆時点での情報をもとにしています。
※スマートウォッチの機能や医療機器認定は日々アップデートされていますので、
最新情報はメーカーや公式発表をご確認ください。
房室接合部調律|心電図の基準や特徴など
ここからは少し難しいかもしれません。
ご興味のある方は読み進めてくださいね。
房室接合部調律
通常は洞房結節が刺激を生成し
拍動のリズムを司ります。
しかし、なんらかの原因で、
房室接合部が40〜60回/分の規則的なリズムで
自動的に刺激を発生させ、
洞結節の代わりを務め、
それが複数拍続くことを
房室接合部調律と呼びます。
心電図の基準・特徴
- 異所性P波が見られ、これは洞調律のP波とは逆向き、もしくはQRS波に重なって認識できないことがあります。
- 40〜60回/分の規則的なリズム(R-R間隔が一定)。
- QRS波形は洞調律と同様の形を示します。
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まとめ
- 房室接合部調律は、心臓リズムの司令塔が本来と違う場所であること。
- 自覚症状・ご心配があれば自己判断せず、循環器内科・循環器科受診を検討。
- 専門医(循環器専門医など)を選ぶと、適切な検査や治療がスムーズに進むと期待。
- 受診はまずクリニックへ。 必要に応じて専門病院へ紹介してもらうのが効率的。
以上となります。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
