健康診断で心電図にST上昇と書かれたら|心筋梗塞のサイン?症状や注意点を解説

本記事は、下記ページの続きとして書かれています。ぜひ最初から読んでみてください。

心電図で異常を指摘されたら?

心電図の上にハートの模型と医師のメガネが置いてあります。

健康診断や学校検診などで、心電図波形、ST上昇を指摘された方へ。
この記事では心電図波形のST上昇とは何かを循環器専門医ができるだけわかりやすく解説し、次にどうすればいいかを丁寧にお伝えします。

※心電図検査を受けた健康診断センターや医療機関から緊急受診の指示があった場合は、ためらわずにその指示に従ってください。
 大切なサインかもしれません。

ST上昇の心電図と症状

健康診断や学校検診などの心電図検査でST上昇と指摘された場合、心筋梗塞などの重大な心臓疾患が関係している可能性があります。
特に急性心筋梗塞では、ST上昇が重要なサインとして現れます。

ST上昇がみられるときに、以下のような自覚症状があらわれることがあります:

  • 強い胸の痛みや締めつけ感(数分以上続く)
  • 胸の中央が重い、焼けるような感じ
  • 背中・肩・あご・腕への放散痛(痛みが広がる)
  • 息苦しさや息切れ
  • 冷や汗
  • 吐き気、めまい、ふらつき
  • 不安感

これらの症状がある場合は、緊急状態の可能性があります。
「胸が苦しい」「おかしい」と感じたら、すぐに救急車を呼ぶことが大切です。

ST上昇には命にかかわらないケース(早期再分極など)もあります。
しかし、自己判断せずに医療機関で評価を受けることが重要です。

心電図のST上昇はなぜ?心筋梗塞?背景や病気など

ST上昇の心電図波形が見られる場合、以下のようなことが考えられます:

心電図波形、ST上昇で考えられる病気や背景を医師が説明しています。

心筋梗塞

心臓の血管が突然詰まり、心筋に重大なダメージが生じる病気です。

心膜炎 / 心筋炎

心臓を包む膜や心臓の筋肉に炎症が起きる病気です。

早期再分極

特に若年者に多く、正常の範囲内とされることが多い変化です。

心筋症

心臓の筋肉が分厚くなったり、薄くなったりする病気です。

心室瘤

心臓の心室壁の一部が瘤(こぶ)のように膨らんだ状態になります。

その他の非虚血性ST上昇

Brugada(ブルガダ)症候群

突然死を引き起こす可能性がある、心臓の電気の異常による病気です。
心電図に特徴的なST上昇がみられることがあります。

Brugada(ブルガダ)型心電図についてはこちら

その他

電解質異常や薬剤によるものなど、さまざまな要因があります。

心電図の波形、ST上昇ってなに?

心電図は、心臓の電気的な動きを記録する検査です。
心臓一回の拍動を示す波形には、各部分名前がついています。

心電図波形、各波の解説はこちら

その中でも「ST」という部分の波形が上に持ち上がっている状態を「ST上昇」と呼びます。
一方で、「ST」という部分の波形が通常より下がっている状態を「ST低下」と呼びます。

「ST上昇」と「ST低下」などをまとめて「ST-T異常」と表記されることもあります。

心電図の「ST上昇」は、心臓の筋肉(心筋)に強い負荷がかかっていたり、ダメージを受けている可能性があるサインです。
ただし、必ずしも重大な病気とは限らず、運動直後や若年者などに見られる一時的な変化のこともあります。

ST低下についてはこちら

ST-T異常についてはこちら

心電図、ST上昇では医療機関を受診した方がいい?

心臓に関係する異常の可能性があるため、「循環器内科」または「循環器科」の受診がおすすめです。

とくに、公式HPや、医師プロフィールに、以下のような記載がある病院・クリニックが安心です:

  • □□循環器学会 専門医 / 認定医 / 所属
  • 〇〇心血管カテーテル学会 専門医 / 認定医 / 所属
  • ◇◇心臓病学会 所属 など

このような専門性を持った医師に相談できると、必要な検査や対応がスムーズに進むことが期待できます。

予約が必要な場合もありますので、受診前に「希望の先生がいる日かどうか」「初診で受け入れているか」などを電話で確認するのが安心です。

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ST上昇の心電図波形では、どんな追加検査をするの?

医師の判断により、以下のような検査が必要になることがあります。

  • 安静時心電図
  • 胸部レントゲン検査
  • 心臓超音波検査(心エコー)
  • 冠動脈造影CT検査
  • 血液検査
  • 【入院】心臓カテーテル検査
  • その他

※これらはすべて行うわけではありません。年齢・症状・他の病気の有無などをふまえて、医師と相談のうえで検査内容が決まります。

安静心電図検査

  • 所要時間:1分程度
  • 自己負担額:約130円 ~ 400円(自己負担割合によります)

「健康診断で心電図は受けたのに、なぜまた必要なの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
実は、前回の検査結果との比較や、同じ変化が繰り返し出ているか(再現性)を確認するために、改めて行うことがあります。

検査のタイミングによって、心電図の波形が変わることもあるためです。
多くの医療機関では、検査当日に結果説明を受けられることが一般的です。

胸部レントゲン検査

  • 所要時間:約5分
  • 自己負担額:約150円 ~ 500円(自己負担割合によります)

胸部のX線撮影によって、心臓の大きさや形、肺の状態などを確認する検査です。
簡便かつ広く実施されており、心不全の兆候や肺の異常を見つける目的でも用いられます
通常、当日中に結果の説明が受けられることが多いです。

心臓超音波検査(心エコー)

  • 所要時間:20~30分程度
  • 自己負担額:約880円 ~ 2,800円(自己負担割合によります)

テレビなどで、妊婦さんがお腹の赤ちゃんを超音波で見ているシーンをご覧になったことはありませんか?
心臓超音波検査も同じしくみで、胸に小さな機器(プローブ)をあてて、心臓の動きや筋肉の厚み、弁の動き、血液の流れなどをリアルタイムで観察します。
痛みはなく、体に負担の少ない安全な検査です。多くの場合、検査当日に結果説明を受けられます。

冠動脈造影CT検査

  • 所要時間:20分程度
  • 自己負担額:約3,000円 ~ 9,200円(自己負担割合によります)

冠動脈は、心臓に酸素と栄養を届ける大切な血管です。
この血管が詰まっていたり、狭くなっていないかを調べるのが、冠動脈造影CT検査です。

造影剤という薬剤を点滴で注入しながらCT撮影を行い、血管の状態を詳細に確認します
ただし、腎機能が低下している方や、息を30秒ほど止めるのが難しい方には実施できない場合もあります
検査そのものは約20分で終了しますが、準備や撮影後の処理も含めて全体で3時間程度かかることがあります

血液検査

  • 所要時間:3分程度
  • 自己負担額:約1,200円 ~ 3,600円(自己負担割合によります)

採血によって、心臓の筋肉にダメージがいっていないか、炎症がおきてないかなど、関連する内科的異常がないかを調べます。

また、BNPなど心臓のストレスを数値で示すマーカーも重要な判断材料となります。
結果は、当日~1週間程度でわかるのが一般的です。

【入院】心臓カテーテル検査

ほかの検査結果や症状から、より詳しく心臓の状態を確認する必要がある場合には、心臓カテーテル検査が提案されることもあります。

この検査は、多くの医療機関で入院にて実施されており、当院でも入院検査として対応しています。
カテーテルと呼ばれる細い管を、手首・肘・足などの動脈から挿入し、造影剤を用いて冠動脈の状態を直接確認します。
局所麻酔で行われ、今後の治療方針を決める上でも非常に重要な検査です。

補足事項

  • 所要時間は検査自体の目安であり、待ち時間や説明時間は含まれていません。
  • 費用は検査部分にかかる自己負担額の目安であり、診察・処方・初再診料等は別途必要となります。
  • 各検査が実施できるかどうかは、医療機関の設備や体制によって異なります

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その他の心電図異常についてはこちら

心電図波形ST上昇の定義・基準など

このセクションは専門的な内容となります。

心電図で「ST上昇」と判断される基準としては、J点から0.08秒後のST部分の上昇量が目安になります
(V2~V3で2mm以上、その他の誘導で1mm以上など)。
また、ST上昇の形状(水平型、上昇型など)や持続時間、他の波形との関係も診断の鍵です。

こうした所見を総合的に判断し、急性心筋梗塞など命に関わる病気を見逃さないようにしています。

ST低下についてはこちら

ST-T異常についてはこちら

まとめ:健康診断などで、ST上昇の心電図を指摘されたら

  • ST上昇は、心臓の筋肉に何らかの変化が起きている可能性
  • 循環器内科(循環器科)の受診が推奨
  • 必要な検査は、症状や年齢などに応じて医師と相談の上で決まる
  • 専門性の高いクリニックや病院を最初に受診しておくと安心

心配な気持ちになるのは当然ですが、早めの受診と的確な検査で、多くのケースは適切に対応できます。
不安をひとりで抱え込まず、まずは専門性の高い医師に相談してみてくださいね。

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