右脚ブロックの心電図結果、受診や精密検査は?|健診異常の方へ

※この記事は、心電図の異常に関する解説シリーズの一部です。
初めてご覧になる方は、前の記事から順にお読みいただくと、より理解しやすくなります。

心電図で異常を指摘されたら?

心電図の上に、医師が使う聴診器とハートの模型が置いてあります。

右脚ブロックと指摘された方へ|クリニック受診前に確認したいポイント

健康診断などで心電図を受完全右脚ブロック、不完全右脚ブロック、RSR’パターンといった所見を伝えられた方もいらっしゃるかと思います。

・「症状があるけど、経過観察でよいのか不安…」
・「原因や隠れた病気があるのでは?」
・「症状はないけど、精密検査を受けるべき?」

——こうした疑問をお持ちの場合は、循環器内科・循環器科を標榜する医療機関での相談が推奨されます。

医師のプロフィールもチェックしてみましょう

受診するクリニックを選ぶ際には、医師の専門分野にも注目してみましょう。
ホームページや看板などで、医師の資格や所属学会が記載されていることがあります。

以下のような資格や所属が明記されていれば、心疾患に詳しい医師と考えられます:

  • 〇〇日本循環器学会:専門医/認定医/会員
     → 心臓病全般に対応可能な循環器専門医である可能性があります。
  • □□日本心臓病学会:専門医/認定医/会員
     → 心疾患に幅広く対応できる医師であることが期待されます。

このようなプロフィールを持つ医師による診察は、検査計画の立案や結果に基づいた対応の判断がスムーズに進む可能性が高くなります。

受診先によっては紹介が必要な場合も

右脚ブロックそのものは、必ずしも重大な病気を意味するわけではありませんが、背景に他の心疾患が隠れているケースもあります。

クリニックによっては対応できる検査・治療が限られることもあり、必要に応じて高次医療機関(総合病院など)へ紹介されるケースもあります。

ただし、循環器専門の医師であれば、紹介先の医師と専門的な連携をとりやすく、紹介受診もスムーズに進むことが期待できます。

受診前の確認もおすすめ

事前にクリニックへ電話し、希望する医師の診察日や予約方法などを確認しておくと安心です。
特に専門医による外来は曜日や人数に制限がある場合もあるため、受診前のひと手間が、よりスムーズな診療につながります。

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脚ブロックとは?右脚ブロックをやさしく解説

心臓は、リズムよく収縮することで全身に血液を送っています。
この動きをコントロールしているのが、心臓の中を通る“電気の通り道”です。

この電気の通り道は、配線(電線)のように心臓の中を張り巡らされています。
右側に伸びる通り道を「右脚(うきゃく)」、左側に伸びるものを「左脚(さきゃく)」と呼びます。

脚ブロックとは何か?

この右脚・左脚の電気の通り道に異常が生じ、電気信号の伝わり方が遅れたり遮断された状態を「脚ブロック」と言います。

脚ブロックには、右脚ブロックと左脚ブロックの2つがあり、それぞれがさらに細かく分類されます。

右脚ブロック

  • RSR’パターン
  • 不完全右脚ブロック
  • 完全右脚ブロック

左脚ブロックについてはこちら

完全右脚ブロック、不完全右脚ブロック、RSR’パターンにて検討される精密検査

  • 安静心電図検査
  • 胸部レントゲン検査
  • 心臓超音波検査
  • ホルター心電図検査
  • 血液検査
  • etc.

どの検査が適しているかは、以下のような要素によって異なります。

  • 自覚症状の有無(例:動悸・息切れ・胸痛 など)
  • 年齢や生活習慣
  • 既往歴や持病の有無
  • 医師による診察・問診の内容

これらを踏まえた上で、医師との相談により最適な検査プランが組まれることが一般的です。

◆ 安静時心電図検査

  • 所要時間: 約1分
  • 自己負担額: 約130~400円(保険適用・自己負担割合による)

健康診断などで経験のある方も多い検査ですが、時期を変えて再度記録することに意味があります
たとえば、前回と異なる波形が現れていないか、心電図異常が一時的なものか再現性があるのかを確認する目的があります。

この検査は通常、当日中に結果説明が可能です。

◆ 胸部レントゲン検査

  • 所要時間: 約5分
  • 自己負担額: 約150~500円(保険適用・自己負担割合による)

胸部のX線撮影によって、心臓の大きさや形、肺の状態などを確認できます。
簡便で広く行われている検査で、心不全の有無や肺の病気の除外にも役立ちます。

結果説明は当日中が一般的です。

◆ 心臓超音波検査(心エコー)

  • 所要時間: 約20分
  • 自己負担額: 約880~2,800円(保険適用・自己負担割合による)

お腹の赤ちゃんの様子を確認する産婦人科の検査と同じ超音波技術を使って、胸にプローブ(機械)をあて、心臓の動きや構造をリアルタイムに観察する検査です。

  • 心筋の動き
  • 弁の開閉や逆流の有無
  • 心室・心房の大きさや形
    などを動画で確認できます。

体に害はなく、妊婦さんにも使われるほど安全な検査です。
検査当日に結果を説明できる場合もあります。

◆ ホルター心電図検査(24時間心電図)

  • 所要時間: 24時間(機器装着時間)
  • 自己負担額: 約1,750~5,400円(保険適用・自己負担割合による)

胸に小型の心電図機器を装着し、日常生活中の心電図を記録します。
最低8時間以上の記録が必要ですが、多くは24時間装着します。

  • 不整脈の頻度やパターン
  • 脈拍が速すぎる/遅すぎる場面の確認
  • 日中・睡眠中の波形変化の把握
    などを目的に行います。

入浴に関しては、機種によってシャワー可・不可が異なるため、事前に医療機関で説明を受けることをおすすめします。
解析にやや時間がかかるため、結果説明は2〜3日後になる場合が一般的です

血液検査

  • 所要時間:3分程度
  • 自己負担額: 約1,200円~3,600円(保険適用・自己負担割合による)

心臓負荷や電解質異常、貧血など、心電図異常の背景となる要因をチェックします。
結果は当日~1週間程度で判明します。

🔍補足事項

  • 本記事で記載している所要時間は、検査自体にかかるおおよその目安です。受付・待機・検査後の説明などにかかる時間は含まれていません。
  • 自己負担額についても、検査費用の概算です。医療制度の変更や、診察料・処方薬代などの追加項目により、実際の支払い額は変動する可能性があります。
  • 検査にかかる時間や費用、結果の説明までの流れは、医療機関の体制によって異なる場合があります。詳細は、受診予定の医療機関にてご確認ください。

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完全右脚ブロック、不完全右脚ブロック、RSR’パターンで考えられる疾患、原因、状態など

医師が右脚ブロックで考えられる病気などを説明しています。

心筋梗塞

心臓を栄養している動脈(冠動脈)が閉塞してしまう病気です。心不全や、突然死の原因となります。
梗塞部位により、心電図検査上、右脚ブロックを呈する事があります。

心筋症

心臓ポンプの筋肉に、異常が生じる病気です。心不全や、突然死の原因となります。
心筋の障害部位により、心電図検査にて右脚ブロックを示す場合があります。

心臓弁膜症

心臓の中には弁という、開放したり、閉鎖したりする事で、血流を制御する構造物があります。
狭窄症や閉鎖不全症(逆流症)による、心室の圧負荷や容量負荷により、右脚ブロックや左脚ブロックを示す事があります。

心房中隔欠損症

心房中隔に欠損孔を認める、先天性心疾患です。
右室容量負荷により、心電図検査にて、右脚ブロックを呈する場合があります。

健常者

心臓疾患含め、特に基礎疾患の無い方でも右脚ブロックを示す場合があります。

脚ブロックは、心電図波形の異常となります

心臓は、右心房にある洞結節より生じた電気刺激が、房室結節を介して心室に伝わります。
心室に伝わった電気的興奮はヒス束、右脚、左脚と呼ばれる伝導路を経由して伝わり、心室を収縮させます。
右脚の興奮伝導時間の延長や、伝導が途絶した状態は、右脚ブロックと呼ばれます。

右脚ブロック

・RSR’パターン

右脚の興奮伝導の流れが、わずかに障害されている事を示します。
心電図検査の波形異常とされますが、健常者でもみとめ、問題とならない事が多いとされます。

・不完全右脚ブロック

右脚ブロックにおいて、心房から伝わった電気的興奮は、左心室や心室中隔の左側へは、左脚を通り正常に伝導されます。
しかし、右心室へは右脚を通過できないため、左心室側よりゆっくりと電気的興奮が伝導されることになります。
QRS幅が、0.10~0.12秒のものを、不完全右脚ブロックと呼びます。

・完全右脚ブロック

不完全ブロックと同様に、右心室への伝導が左心室側からの遅い伝導になるため、波形に特徴が現れます。
QRS幅が0.12秒(3mm)以上のものを、完全右脚ブロックと呼びます。

二枝ブロック

・完全右脚ブロック + 左脚前枝ブロック

左脚はさらに、左脚前枝と左脚後枝にわかれます。左脚前枝のみが障害されたものは、左脚前枝ブロックと呼ばれます。
左脚前枝ブロックは時々、右脚ブロックを合併して、二枝ブロックとなります。

心電図検査にて、右脚ブロック波形(胸部誘導V1において、rsR’パターン、またはM型のQRS波を示すこと、肢誘導aVL, 胸部誘導V5, V6 などでスラー、もしくは結節を伴った幅の広いS波を示すこと、
および右側胸部誘導V1, V2, V3において2次性のST-T 変化を認める)とともに、著明な左軸偏位(肢誘導ⅠにおいてR波高 > S波高、かつ肢誘導ⅡにおいてR波高 < S波高、肢誘導aVRにおいてR波高 < S波高(-60°~-90°の事が多い))を認めると、右脚と左室前枝の二枝ブロックと診断されます。

・完全右脚ブロック + 左脚後枝ブロック

左脚はさらに、左脚前枝と左脚後枝にわかれます。左脚後枝のみが障害されたものは、左脚後枝ブロックと呼ばれます。
左脚後枝ブロックは、しばしば右脚ブロックを合併することがあり、二枝ブロックとなります。

心電図検査にて、右脚ブロック波形(胸部誘導V1において、rsR’パターン、またはM型のQRS波を示すこと、肢誘導aVL, 胸部誘導V5, V6 などでスラー、もしくは結節を伴った幅の広いS波を示すこと、および右側胸部誘導V1, V2, V3において2次性のST-T 変化を認める)とともに、著明な右軸偏位(肢誘導aVFにおいてR波高 > S波高、かつ肢誘導aVRにおいてR波高 < S波高(+120°~+180°の事が多い))を認めると、右脚と左室後枝の二枝ブロックと診断されます。

左脚ブロックについてはこちら

以上となります。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました!

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