健康診断や学校検診などで、
心電図波形、ST上昇を
指摘された方へ。
この記事では対応の注意点や
自覚症状、ST上昇とは何かを
循環器専門医ができるだけわかりやすく解説し、
次にどうすればいいかを
丁寧にお伝えします。
※本記事は診断や治療を目的としたものではありません。
※受診の判断材料や、理解を深める参考としてお使いください。
※検査元から受診指示がある方は、必ず医療機関をご受診ください。

本記事は、下記ページの続きとして書かれています。
ぜひ最初から読んでみてください。
ST上昇の心電図と症状
健康診断や学校検診などの
心電図検査で
ST上昇と指摘された場合、
心筋梗塞などの重大な心臓疾患が
関係している可能性があります。
心電図検査を受けた
健康診断センターや医療機関から、
緊急受診の指示があった場合は
ためらわずにその指示に従ってください。
例えば急性心筋梗塞では
ST上昇が重要なサインとして現れます。
ST上昇がみられるときに、
以下のような自覚症状があらわれることがあります:
- 強い胸の痛みや締めつけ感(数分以上続く)
- 胸の中央が重い、焼けるような感じ
- 背中・肩・あご・腕への放散痛(痛みが広がる)
- 息苦しさや息切れ
- 冷や汗
- 吐き気、めまい、ふらつき
- 不安感
これらの症状がある場合は、
緊急状態の可能性があります。
「胸が苦しい」「おかしい」と感じたら、
すぐに救急車を呼ぶことが大切です。
ST上昇には
命にかかわらないケース(早期再分極など)もあります。
しかし、自己判断せずに医療機関で
評価を受けることが重要です。
✅健康診断の心電図で【経過観察】や【異常なし】…でも体調不良? それって病気?
心電図のST上昇はなぜ?心筋梗塞?背景や病気など
ST上昇の心電図波形が見られる場合、
以下のようなことが考えられます:

心筋梗塞
心臓の血管が突然詰まり、
心筋に重大なダメージが生じる病気です。
心膜炎 / 心筋炎
心臓を包む膜や心臓の筋肉に、
炎症が起きる病気です。
早期再分極
特に若年者に多く、
正常の範囲内とされることも多い変化です。
心筋症
心臓の筋肉が分厚くなったり、
薄くなったりする病気です。
心室瘤
心臓の心室壁の一部が瘤(こぶ)のように、
膨らんだ状態になります。
その他の非虚血性ST上昇
Brugada(ブルガダ)症候群
突然死を引き起こす可能性がある、
心臓の電気の異常による病気です。
心電図に特徴的なST上昇がみられることがあります。
その他
電解質異常や薬剤によるものなど、
さまざまな要因があります。
心電図の波形、ST上昇ってなに?
心電図は、心臓の電気的な動きを
記録する検査です。
心臓一回の拍動を示す波形には、
各部分名前がついています。
その中でも「ST」という部分の波形が
上に持ち上がっている状態を
「ST上昇」と呼びます。
一方で、「ST」という部分の波形が
通常より下がっている状態を、
「ST低下」と呼びます。
「ST上昇」と「ST低下」などをまとめて、
「ST-T異常」と表記されることもあります。
心電図の「ST上昇」は、
心臓の筋肉(心筋)に
強い負荷がかかっていたり
ダメージを受けている
可能性があるサインです。
ただし、必ずしも重大な病気とは限らず、
運動直後や若年者などに見られる
問題のない変化のこともあります。
心電図、ST上昇では医療機関を受診した方がいい?
心臓に関係する
異常の可能性があるため、
「循環器内科」または「循環器科」の
受診がおすすめです。
とくに、公式HPや、医師プロフィールに、
以下のような記載がある病院・クリニックが安心です:
- □□循環器学会 専門医 / 認定医 / 所属
- 〇〇心血管カテーテル学会 専門医 / 認定医 / 所属
- ◇◇心臓病学会 所属 など
このような
専門性を持った医師に相談できると、
必要な検査や対応が
スムーズに進むことが期待できます。
予約が必要な場合もありますので、
受診前に「希望の先生がいる日かどうか」
「初診で受け入れているか」などを
電話で確認するのが安心です。
心電図のST上昇|受診後の検査や治療はどうなるの?
お近くの循環器内科・循環器科受診を決める際、
受診後はどうなるの?
と疑問に思いますよね。
受診後の流れについて
医師の診察のうえで、心電図の「ST上昇」が
- 本当に心配すべき心電図変化なのか
- あるいは様子見でいいものか
といった方針決定のため、
当日〜2週間程度以内に、外来で出来る追加検査が
行われるのが一般的です。
※具体的な検査については、後のセクションで詳しく解説いたします。
検査結果が出た後の主なパターン
検査結果や診察により、
方針が決まっていきます。
1. 経過観察となるケース
軽いもの:
「特に心配ないでしょう。
困った症状などがあれば、再度受診してください。」
念のため:
「○ヵ月後に再度、ご来院していただき、
もう一度検査しましょう。」
頓服の相談:
「強い症状などが出た時のために、
必要に応じてお薬を持っておきましょう。」
万一に備えて:
「△△の様な症状が出たら、
救急を含めて、急いで医療機関を受診してください。」
2. お薬による治療が始まるケース
医師の判断で、
心臓に負担をかけないようにしたり、
不整脈を整えるお薬などが処方され
定期通院となる場合もあります。
3. 大きな病院への紹介となるケース
より詳しい検査や治療が必要と
判断された場合には、
大学病院、急性期総合病院
専門病院への紹介が行われます。
緊急対応が必要なケース
危険な不整脈や
緊急性の高い心疾患が疑われる場合は、
紹介状を受け取り、
当日中の受診を指示されることもあります。
※場合によっては、救急搬送となるケースもあります。
紹介予約による検査~治療
CT・シンチグラフィ・MRI・心臓カテーテルなど、
より高度な検査や治療が必要な場合には、
事前予約での紹介受診となります。
自己判断せず、専門科の診断を
心電図の異常は実際のところ
「検査してみたら特に問題なかった」
というケースもあります。
しかし、心臓は重要臓器であることは
間違いありません。
専門医などの診察や検査を
積極的に受けることをお勧めいたします。
不安を一人で抱えず、
ご自身の心臓の状態を知ることが
安心につながります。
ST上昇の心電図波形では、どんな追加検査をするの?
医師の判断により、
以下のような検査が
必要になることがあります:
- 安静時心電図
- 胸部レントゲン検査
- 心臓超音波検査(心エコー)
- 冠動脈造影CT検査
- 血液検査
- 【入院】心臓カテーテル検査
- その他
※これらはすべて行うわけではありません。
※年齢・症状・他の病気の有無などをふまえて、
医師と相談のうえで検査内容が決まります。
安静心電図検査
- 所要時間:1分程度
- 自己負担額:約130円 ~ 400円(自己負担割合によります)
「健康診断で心電図は受けたのに、
なぜまた必要なの?」と、
疑問に思う方も
いるかもしれません。
実は、前回の検査結果との比較や、
同じ変化が繰り返し出ているか(再現性)を
確認するために、
改めて行うことがあります。
検査のタイミングによって、
心電図の波形が変わることもあるためです。
多くの医療機関では、
検査当日に結果説明を受けられることが一般的です。
胸部レントゲン検査
- 所要時間:約5分
- 自己負担額:約150円 ~ 500円(自己負担割合によります)
胸部のX線撮影によって、
心臓の大きさや形、
肺の状態などを確認する検査です。
簡便かつ広く実施されており、
心不全の兆候や肺の異常を見つける目的でも用いられます。
通常、当日中に結果の説明が受けられることが多いです。
心臓超音波検査(心エコー)
- 所要時間:20~30分程度
- 自己負担額:約880円 ~ 2,800円(自己負担割合によります)
テレビなどで、妊婦さんが、
お腹の赤ちゃんを超音波で見ているシーンを、
ご覧になったことはありませんか?
心臓超音波検査も同じしくみで
胸に小さな機器(プローブ)をあてて、
心臓の動きや筋肉の厚み
弁の動き、血液の流れなどを、
リアルタイムで観察します。
痛みはなく、
体に負担の少ない安全な検査です。
多くの場合、検査当日に結果説明を受けられます。
冠動脈造影CT検査
- 所要時間:20分程度
- 自己負担額:約3,000円 ~ 9,200円(自己負担割合によります)
冠動脈は、心臓に酸素と栄養を届ける
大切な血管です。
この血管が詰まっていたり、
狭くなっていないかを調べるのが、
冠動脈造影CT検査です。
造影剤という薬剤を点滴で注入しながら
CT撮影を行い、
血管の状態を詳細に確認します。
ただし、腎機能が低下している方や、
息を30秒ほど止めるのが難しい方には
実施できない場合もあります。
検査そのものは約20分で終了しますが、
準備や撮影後の処理も含めて
全体で3時間程度かかることがあります。
血液検査
- 所要時間:3分程度
- 自己負担額:約1,200円 ~ 3,600円(自己負担割合によります)
採血によって、心臓の筋肉にダメージがいっていないか、
炎症がおきてないかなど、
関連する内科的異常がないかを調べます。
また、BNPなど心臓のストレスを数値で示すマーカーも
重要な判断材料となります。
結果は、当日~1週間程度でわかるのが一般的です。
【入院】心臓カテーテル検査
ほかの検査結果や症状から、
より詳しく心臓の状態を確認する必要がある場合には、
心臓カテーテル検査が
提案されることもあります。
この検査は、多くの医療機関で入院にて実施されいます。
カテーテルと呼ばれる細い管を、
手首・肘・足などの動脈から挿入し、
造影剤を用いて冠動脈の状態を直接確認します。
局所麻酔で行われ、
今後の治療方針を決める上でも非常に重要な検査です。
補足事項
- 所要時間は検査自体の目安となります
- 待ち時間や説明時間は含まれていません。
- 費用は検査部分にかかる自己負担額の目安です
- 診察・処方・初再診料等は別途必要となります。
- 各検査が実施できるかどうかは、医療機関の設備や体制によって異なります。
スマートウォッチ心電図でST上昇はわかる?
ST上昇は、
心筋梗塞など命に関わる病気のサインとして現れる
波形異常のひとつです。
スマートウォッチの心電図機能では、
不整脈の一部を検出することはできますが、
ST上昇のような波形の変化を
正確に判定することはできません。
そのため、「胸の痛み」「息苦しさ」「冷や汗」
などを感じ、
ST上昇が疑われる状況では、
スマートウォッチに頼らず
医療機関を受診することが大切です。
診断には病院で行う
12誘導心電図が必要となります。
※執筆時点での情報をもとにしています。
※スマートウォッチの機能や医療機器認定は日々アップデートされていますので、
最新情報はメーカーや公式発表をご確認ください。
心電図波形ST上昇の定義・基準など
このセクションは専門的な内容となります。
心電図で「ST上昇」
と判断される基準としては、
J点から0.08秒後の
ST部分の上昇量が目安になります
(V2~V3で2mm以上、その他の誘導で1mm以上など)。
また、ST上昇の形状(水平型、上昇型など)や
持続時間、他の波形との関係も
診断の鍵です。
こうした所見を総合的に判断し、
急性心筋梗塞など命に関わる病気を
見逃さないようにしています。
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まとめ:健康診断などで、ST上昇の心電図を指摘されたら
- ST上昇は、心臓の筋肉に何らかの変化が起きている可能性
- 循環器内科(循環器科)の受診が推奨
- 必要な検査は、症状や年齢などに応じて医師と相談の上で決まる
- 専門性の高いクリニックや病院を最初に受診しておくと安心
心配な気持ちになるのは当然ですが、
早めの受診と的確な検査で、
多くのケースは適切に対応できます。
不安をひとりで抱え込まず、
まずは専門性の高い医師に
相談してみてくださいね。
以上となります。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

