健康診断や学校検診の結果で「ST-T異常」と書かれていると、
ちょっとドキッとしますよね。
異常と言われたら、
「心臓の病気?」
「原因は?」
「症状ないけど、大丈夫なのかな?」
と心配になるのは当然です。
特に、高校生などの学生さんや、
その保護者の方にとっては、
何をどう考えたらいいか戸惑う場面だと思います。
そこで今回は、ST-T異常の心電図所見とはどういうことなのか、
そしてどんな背景や病気が考えられるのかを、
循環器専門医の視点から、やさしく解説します。

このページは、下記記事の続編となります。
よろしければ最初からご覧になってください。
ST-T異常とは?心電図の“波形”の異常です
心電図は心臓が1回動くと、
その電気信号がひとかたまりのギザギザとして表現されます。
実はギザギザにはそれぞれ名称がついています。
「ST-T異常」は、心電図の波形の中でも、
「ST部分」や「T波」と呼ばれる部分に変化があるという意味です。
これらは、心臓の筋肉が電気刺激で収縮したあとに、
元の状態に戻る過程を示す波形です。
この波形がいつもと違う形になっていると、
「ST-T異常」と判定されます。
心電図のST-T異常は、大きく分けて4種類あります
それぞれ、意味する病気や心臓の状態が異なります。
ST上昇の心電図
心電図の「ST部分」の波形が通常より上に突き出すように見えます。
ST低下の心電図
心電図の「ST部分」の波形が通常より下がって見えます。
平低T波の心電図
心電図でT波という部分が「平ら≒低く」みえます。
陰性T波
心電図でT波という部分が、下向きに反転しています
心電図、ST-T異常と症状について
明らかな症状が出ないこともありますが、
次のような自覚症状がみられることがあります:
- 胸の痛みや圧迫感
- 息切れや呼吸しづらさ
- 動悸(ドキドキ)
- めまい、ふらつき
- 倦怠感、疲れやすさ
ST-T異常は、狭心症や心筋症、電解質異常、
心筋炎、ストレス、薬の影響など、さまざまな原因で現れます。
無症状でも、心臓に何らかの変化が起きているサインの可能性があるため、
一度循環器内科を受診され、
精密検査などを受けることをおすすめいたします。
ST-T異常の心電図で考えられる原因・病名など
心電図にST-T異常が出る背景には、
さまざまな原因があります。

狭心症や心筋梗塞
心臓の血流に問題がある可能性があります。
胸の圧迫感、息切れなど、
症状がある場合は注意が必要です。
左室肥大
左心室という、血液を全身に送り出すポンプの部屋の壁(筋肉)が分厚くなっています。
高血圧のある方や、
長年スポーツをしている方などに見られます。
薬剤の影響、電解質異常
服薬中の方や体調不良に伴い、
ST-T部分の波形が変わることもあります。
健康な方でも見られることがある
特に若年者(高校生、大学生など)や女性の方では、
「生理的ST-T変化」として問題がない場合もあります。
スマートウォッチ心電図でST-T異常はわかる?
スマートウォッチ心電図で記録できるのは、
脈が「不規則かどうか」、「速いか遅いか」といった、
一部の不整脈に限られます。
そのため、ST-T異常のような波形異常の判定を、
スマートウォッチですることはできません。
ST-T異常の判定には、
病院・クリニックで行う12誘導心電図検査が必要です。
スマートウォッチ心電図は
「不整脈を発見するきっかけ」に役立つものと考え、
波形異常の確認には医療機関を受診しましょう。
※執筆時点での情報をもとにしています。
※スマートウォッチの機能や医療機器認定は日々アップデートされていますので、
最新情報はメーカーや公式発表をご確認ください。
子供や高校生でも「ST-T異常」と指摘されることがあります
学校検診で見つかるST-T異常の多くは、
必ずしも重大な病気とは限りません。
ただし、念のため医療機関で一度評価を受けておくと安心です。
特に、以下のような症状や家族歴がある場合は受診が推奨されます:
- 胸の痛みや動悸、息切れがある
- 家族に突然死や心臓病の既往がある
- 運動中に気を失ったことがある
ST-T異常が見つかったら?循環器専門医の受診がお勧めです
気になる症状や、ご不安があれば、循環器内科、
子供さんの場合は循環器分野を得意とする小児科受診がお勧めです。
12誘導心電図の再検査や、心エコー・血液検査などを通じて、
心臓の状態を詳しく確認することができます。
特に運動時の胸痛や息切れがある場合は、
早めの相談が安心につながります。
まとめ:心電図でST-T異常について
- ST-T異常はあくまで“心電図波形の変化”であって、「病気が確定した」というわけではありません。
- 背景にはごく軽い変化から重大な病気まで幅があり、医師の診察や確認の検査が必要となります。
- 何よりも、「異常」と言われて不安になった方、「自覚症状」のある方が適切な情報と医療機関にたどり着けることが大切です。
ここまで読んでいただきありがとうございました!