心電図【低電位差】とは?|症状や四肢誘導、胸部誘導の違い、健康診断後の対応も解説

健康診断や学校検診、あるいは病院での心電図検査で
低電位差 四肢誘導」や「低電位差 胸部誘導」と記載されていた場合、

不安を感じる方も少なくありません。

実際のところ、低電位差とは何か
症状や原因にはどんなものがあるのか、

どの診療科を受診すればよいのか、
四肢誘導と胸部誘導で何が違うのか

など循環器専門医の視点から丁寧に解説します。

※本記事は診断や治療を目的としたものではありません。
受診の判断材料や、理解を深める参考としてお読みください。

心電図の上にハートの模型が置いてあります。

本ページは、下記親ページの続きとして書かれています。

よろしければ最初からご覧ください。

親ページ:心電図で異常を指摘されたら?

低電位差の心電図と自覚症状

多くの場合、低電位差そのもので、
はっきりとした自覚症状が出ることはありません

しかし、低電位差は
心臓や全身の状態を反映する「ヒント」のようなもので、

背景に:

  • 心臓疾患
  • 内科的な病気

が隠れていることもあります。

そのため、たとえ症状がなくても、
健康診断や学校検診で指摘された場合には、

一度医療機関で相談してみるのが安心です。

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心電図、低電位差の原因や背景

低電位差の原因や背景について循環器専門医がやさしく解説しています。

低電位差の原因や背景には様々な理由があります:

体格的な要因

肥満や、胸壁の脂肪が多いと、
心電図の電気信号が弱く記録されることがあります。

甲状腺機能の異常

特に甲状腺機能低下症では、
心電図に低電位差を認めることがあります。

肺の病気

肺気腫や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の方に、
低電位差の心電図が見られることがあります。

心嚢液の貯留

心臓は薄い膜に包まれています。

心臓とその薄い膜の間に液体がたまる状態です。

心筋梗塞や心筋症

心筋梗塞や心筋症といった心臓の病気のため
心臓自体が弱っており、

電気的な活動そのものが低下している場合にも、
低電位差が見られることがあります。

心電図の異常|生命保険・医療保険はどうなる?

低電位差の心電図をザックリ解説:四肢誘導と胸部誘導

心臓がドクンと動くと、
それにあわせて心電図に大きな波(QRS波)が記録されます。

その波の振れ幅が通常より小さい場合、
「低電位差(Low voltage)」と言われます。

心電図検査の時、手首足首などの四肢と、
胸の真ん中から左胸にかけて、

電極を装着されたのを覚えてみえますか?

👉心電図の記録についてはこちら

👉心電図波形、各波の解説はこちら

四肢誘導の低電位差、心電図について

手首足首などの四肢に装着された電極から
心電図記録することを、

四肢誘導と呼びます。

四肢誘導の心電図で、
QRS波の振れ幅が通常より小さいと、

低電位差(四肢誘導)の判定となります。

四肢誘導は体幹から遠いため、
全身状態や甲状腺機能、

心嚢液貯留の影響が波形に強く反映されます。

胸部誘導の低電位差、心電図について

胸の真ん中から左胸に装着された電極から
心電図記録することを、

胸部誘導と呼びます。

胸部誘導の心電図で、
QRS波の振れ幅が通常より小さいと、

低電位差(胸部誘導)の判定となります。

胸部誘導は肺や心臓に近いため、
局所的な肺疾患や心肥大などの局所要因

波形に反映されやすいという特徴があります。

👉その他の心電図異常についてはこちら

心電図の低電位差、受診の目安

健康診断や学校検診で、低電位差の心電図は多くの場合、
軽度異常や経過観察の判定になっていると思います。

しかし、気になる症状があったり、
ご心配に思われる場合は、

内科または循環器内科・循環器科の受診がおすすめです。

特に、甲状腺の病気や心疾患が疑われる場合には、
専門的な検査を受けられる施設を選ぶと安心です。

Q
受診前に、電話問い合わせはした方がいいですか?
A

受診の前に、一度クリニックや病院へ
お電話で連絡を入れておくのもおすすめです。

予約方法や、希望する医師の診療日を事前確認しておくと、
手続きや当日の流れがよりスムーズになります。

とくに専門外来では、診察日が特定の曜日に設定されていたり
担当医が限られている場合もあります。

事前に問い合わせておくと、待ち時間の短縮や、
予約に関するトラブルを防ぐことにつながります。

心電図、低電位差|受診後の検査や治療への流れ

健康診断や学校検診
心電図の低電位差を指摘された場合、

気になるのが「ここから具体的にどうなるの?」
という事だと思います。

まずは、お近くの医院・クリニック
内科や循環器内科・循環器科を標榜する

医療機関への受診をご検討ください。

医療機関受診後の流れについて

医師の診察のうえで、心電図の「低電位差」が

  • 本当に心配するべき異常か
  • 様子を見ていいものか

といった判断のため、

外来で可能な追加検査が、
当日〜2週間程度以内に、行われるのが一般的です。

※個々の検査については、後のセクションで解説いたします。

検査結果が揃った後の主なパターン

診察や検査結果によって、
そこからの方針が決定されます。

とはいえ、心電図異常=すぐ治療が必要
というケースは少数であり

多くの場合「経過観察」となります。

1. 経過観察となるケース

軽いもの

「特に心配ありません。
困った症状などが出てきたら、再度ご相談ください。」

念のため

「○ヵ月後位にご来院いただき、
もう一度、確認しましょう。」

頓服の相談

「強い症状などが出たときのため、
必要に応じてお薬を持っておきましょう。」

2. お薬による治療が始まるケース

診察や検査結果に基づき医師の判断で
原因に応じたお薬が処方され、

定期通院となるケースもあります。

3. 大きな病院への紹介となるケース

より詳しい検査や、
お身体に一定上の負担がかかる処置や治療が必要と

判断された場合には急性期総合病院、
大学病院、専門病院などへの紹介を提案されます。

緊急対応が必要なケース(まれ)

リスクの大きい心疾患や
重い不整脈が疑われる場合は、

紹介状を持って当日中の受診を勧められることがあります。

※場合によっては、救急搬送となることもあります。

紹介予約による検査~治療

CT・MRI・シンチグラフィ・特殊な採血など、
より高度な検査や治療が必要な場合には、

事前予約での紹介受診となります。

Q
大きな病院に最初から受診してはダメですか?
A

はじめから総合病院などを受診しても構いませんが、
効率的でない場合があります。

大きな病院は専門外来の予約が取りにくかったり、
初診時に紹介状が必要であったり

待ち時間や費用が多くかかることもあります。

一方で、地域のクリニックや医院では、
早めに受診することが出来たり

「病診連携」といった仕組みがあり、
必要な場合、大きな病院への紹介状を書いてもらえます。

そのため、まずはお近くの医院やクリニックを受診され、
必要な場合に大きな病院などへ、紹介してもらう流れが、

結果的にスムーズな場合があります。

自己判断せず、専門科の診断を

心電図の異常と聞くと、
つい深刻な想像をしてしまうかもしれません。

しかし、実際は「検査してみたら特に問題なかった
というケースの方が多いです。

ただし、心臓が命に直結する重要臓器であることは確かです。

「念のため」でも、
専門医などの診察や検査を積極的に受けることがお勧めです。

不安を一人で抱えず、
ご自身の心臓の状態を知ることが

安心につながります。

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心電図の異常|生命保険・医療保険はどうなる?

低電位差の心電図で必要な追加検査

心電図で低電位差が指摘された場合、
次のような検査が行われることがあります:

心臓超音波検査(心エコー)

心臓の構造や動きを直接観察します。

心膜液や心不全の評価にも役立ちます。

胸部レントゲン検査

心臓の大きさや肺の状態をチェックします。

血液検査

内分泌(ホルモンの値)や炎症、
心臓負担の評価も必要に応じて行われます。

ホルター心電図(24時間記録)

日常生活の中での心電図変化を詳しく調べる方法です。

その他

疑わる病気に対して検査が行われます。

補足

これらの検査はすべて行われるわけではなく、
年齢や症状、背景に応じて

医師と相談しながら選択されます

スマートウォッチ心電図で低電位差はわかる?

低電位差は、
心電図の波形全体の振れ幅(電位)が通常より

小さくなっている状態となります。

スマートウォッチ心電図は、
脈が速い・遅い・不規則といった

リズムの異常を検知することはできます。

つまり「脈がゆっくりしている」「乱れている」までは、
確認できるかもしれません。

しかし、低電位差のよう
波形そのものの大きさを判定することはできません

判定には必ず病院やクリニックで行う12誘導心電図が必要です。

スマートウォッチは
日常的なリズムチェックに役立つ便利なツールですが、

波形異常の有無を判断することはできません。

ご心配な場合は、循環器内科・循環器科受診をご検討ください。

スマートウォッチと病院・クリニックの心電図の違いについて

※執筆時点での情報をもとにしています。

※スマートウォッチの機能や医療機器認定は日々アップデートされていますので、
 最新情報はメーカーや公式発表をご確認ください。

低電位差の心電図:基準や定義など

ここからは少し詳しい内容となります。

ご興味のある方は読み進めてくださいね。

四肢誘導と胸部誘導それぞれの「低電位差」の基準

心電図において「低電位差(Low Voltage)」とは、
QRS波の振幅が一定の基準を下回る状態を指します。

標準的な診断基準は下記となります:

  • 四肢誘導(I, II, III, aVR, aVL, aVF)すべてのQRS振幅が5mm未満
  • 胸部誘導(V1〜V6)の平均QRS振幅が10mm未満

👉心電図の記録についてはこちら

👉心電図波形、各波の解説はこちら

👉心電図の波形異常、不整脈一覧

心嚢液貯留や肺の病気と「低電位差」の心電図

症候性心嚢液貯留(心タンポナーデを含む)では、
四肢誘導・胸部誘導ともにびまん性のQRS電位低下が高頻度に出現します。

心臓が液体に包まれることで電気信号が、
皮膚電極に伝わりにくくなるためです。

さらに、**電気軸の揺れや心拍ごとの波形の変動(Electrical Alternans)**が見られることもあり、
心嚢液貯留の診断上、

特徴的な所見となります。

肺気腫や慢性閉塞性肺疾患(COPD)など肺疾患でも胸部誘導、
特にV1〜V3におけるQRS振幅の顕著な低下がみられることがあります。

これは、肺の過膨張や線維化により心臓が胸壁から遠ざかり、
心電図信号が減衰するためです。

低電位差の分布パターンと波形変動の有無をあわせて評価することで、
全身性か局在性かの鑑別に有用です。

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ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

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