健康診断や学校検診の心電図検査で、
「左軸偏位(さじくへんい)」の指摘を受けて、
ご不安に感じている方もいるのではないでしょうか?
この記事では、心電図の「左軸偏位」が何を意味するのか、
症状や原因、治るのかどうか、運動はしてもいいのかなど、
循環器専門医がわかりやすく解説します。

本記事は下記ページの続きとして記載しています。
よろしければ、最初からご参照ください。
✅心電図で異常を指摘されたら?
左軸偏位とは?|心電図所見でわかる“心臓の電気の向き”
心電図では、心臓を流れる電気を読み取っています。
検査の時に、胸の中央から左胸にかけてと、
手足に電極を付けたのを覚えていますか?
さまざまな電極から読み取れる電気信号を総合すると、
心臓が動くときの「大まかな電気の流れ≒軸」がわかります。
「左軸偏位」とは、この「大まかな電気の流れ≒軸」の向きが、
左側にずれている状態のことを指します。
通常、電気の流れは左下方向ですが、
それが左に偏っている場合に「左軸偏位」と判定されます。
偏りがあるから異常、というわけではなく、
体格や年齢などの影響で自然に生じることもあります。
一方で、電気の流れが右に偏っている場合は、
「右軸偏位」とされます。
心電図、左軸偏位の原因|体格から病気までさまざま
左軸偏位の原因には、以下のようなものがあります:
体格や年齢
肥った方や、高齢者に認めることがあります。
左室肥大
高血圧症などに伴う、左室肥大が原因の場合もあります。
左脚ブロック
心臓の電気の通り道に異常があると、
特に左脚前枝ブロックで左軸偏位となることがあります。
左軸偏位の心電図と、自覚症状について
基本的に、左軸偏位そのものに症状はありません。
ただし、以下のような症状がある場合は、
偏位の背景に心臓の病気が隠れている可能性もあります:
- 息切れや動悸
- 胸の圧迫感
- めまい・立ちくらみ
- 疲れやすさ
こうした症状がある場合は、
循環器内科・循環器科の受診を積極的に検討しましょう。
心臓超音波検査(心エコー)や負荷心電図などの精密検査で、
心臓の状態を詳しく評価する必要があるかもしれません。
左軸偏位って治る?運動や日常生活への影響は?
治療について
左軸偏位は「病気の名前」ではなく「心電図の所見」となります。
そのため、治療すべきかどうかについても、原因次第となります。
- 体格やご年齢によるものであれば、経過観察のみでOK
- 高血圧症、心筋症、伝導障害などがあれば、それらの検索と原因に応じた治療
運動や日常生活について
多くの場合、左軸偏位があるからといって、
運動や日常生活を制限する必要はありません。
ただし以下の場合は注意が必要です。
- 動悸・息切れなどの気になる症状がある
- 心臓病の診断を受けている
受診の目安
気になる症状がある、
ご心配・ご不安が強い場合は、
循環器内科・循環器科に受診を検討してくださいね。
スマートウォッチ心電図で左軸偏位はわかる?
左軸偏位とは、心電図上、
心臓の電気の向き(心電図の電気軸)が通常より左側に傾いている状態となります。
スマートウォッチ心電図には、脈の速さや遅さ、不規則さを検出する機能があります。
ですので「脈がゆっくりしている」「リズムが乱れている」といった変化までは、
把握できる可能性があります。
ただし、左軸偏位のように心臓の電気の向きを細かく評価することはできません。
診断のためには病院やクリニックで行う12誘導心電図が不可欠です。
スマートウォッチは日常的なリズム確認には便利ですが、
気になることがある場合は、
循環器内科・循環器科受診をご検討いただくこと大切です。
※執筆時点での情報をもとにしています。
※スマートウォッチの機能や医療機器認定は日々アップデートされていますので、最新情報はメーカーや公式発表をご確認ください。
左軸偏位の心電図、所見や波形の特徴など
ここからは少し専門的な内容となります。
ご興味のある方は読んでみてくださいね。
心臓内を流れる電気の主な方向は「電気軸」と呼ばれます。
通常、この刺激は、
心房から心室へと左下方向へ伝わります。
I誘導では−90°〜+90°方向の電気の流れを上向きの波形として示し、
aVF誘導では0°〜+180°方向の電気の流れを同様に上向き波形として描出します。
そのため、電気軸が正常範囲(0°〜+90°)にある場合は、
I誘導・aVF誘導ともにP波・QRS波は上向きに記録されます。
一方、電気軸が**−90°から0°の範囲にある状態を、
左軸偏位(left axis deviation:LAD)と呼びます。
左軸偏位では、I誘導ではQRS波は上向きとなるものの、
aVF誘導では下向き**となり、**R波よりもS波が高くなる(S波優位)**特徴がみられます。
まとめ
- 心電図の「左軸偏位」=「病気」ではありません
- 左軸偏位は、心電図で電気の流れが左に偏っていることを示す所見
- 高血圧、心肥大、左脚前枝ブロックとの合併などが原因のことも
- 無症状のことが多いが、症状がある場合は要注意
- 日常生活や運動は、多くのケースで制限は不要
- 不安なときは、循環器内科・循環器科での確認が推奨
以上となります。
ここまで読んでいただきありがとうございます!