※本記事は、以下の記事の続きとしてお読みいただくと、より理解が深まります。

左脚ブロックと一口にいっても、実際にはいくつかのタイプに分類されます。
主に、以下の4つの型に分けられます(以下では、まとめて不完全左脚ブロック、完全左脚ブロックなどと表記します)。
- 不完全左脚ブロック(Incomplete LBBB)
- 完全左脚ブロック(Complete LBBB)
- 左脚前枝ブロック(Left Anterior Fascicular Block:LAFB)
- 左脚後枝ブロック(Left Posterior Fascicular Block:LPFB)
不完全左脚ブロック、完全左脚ブロックなどで受診前の確認ポイント
※健診センターや医療機関から**「至急の受診が必要」と指示された場合は、その指示に必ず従ってください。**
本記事は、緊急性が高くないとされた方向けに、受診前の確認ポイントを紹介しています。
健康診断や外来の心電図検査で、不完全左脚ブロック、完全左脚ブロックなどといった所見を指摘されることがあります。
特に症状がある方は、
「このまま経過観察でいいのか」
「何か隠れた病気があるのでは」
と不安に感じられるかもしれません。
一方で、症状がない場合でも精密検査が必要かどうかは、ブロックの程度や他の所見によって異なります。
こうした場合には、**「循環器科」または「循環器内科」**を標榜するクリニックや病院の受診が推奨されます。
特に、心臓疾患に詳しい医師の診察を受けることで、必要な検査の選定や治療方針がスムーズになると期待できます。
🔍 医師の専門性を事前にチェックする方法:
受診を検討している医療機関のホームページなどで、医師の専門分野や所属学会、資格を確認するのがおすすめです。
WEBページがない場合でも、クリニックの看板や掲示に記載されていることもあります。
次のような記載があるかを参考にしてみてください:
- □□心血管インターベンション治療学会 専門医/認定医/所属
→ 狭心症・心筋梗塞など、心臓血管系疾患の専門性を示しています。 - △△循環器学会 専門医/認定医/所属
→ 心臓や心血管全般に関する診療に強いことを示しています。 - ○○心臓病学会 専門医/認定医/所属
→ 心臓病全般を幅広く扱う医師である可能性が高いです。
このような医師が在籍している医療機関では、検査、治療方針の組み立てが的確であったり、
必要に応じた総合病院や専門医療機関への紹介もスムーズに行われることが期待できます。
📞 受診前の確認も大切です
受診を希望する医師が決まっている場合は、事前にクリニックへ電話して「その先生の診察が可能かどうか」を確認しておくと安心です。
医師の勤務日が限られていたり、予約制のクリニックもあるため、事前確認が推奨されます。
左脚ブロックのザックリ解説
心臓には電線のようなものが張り巡らされていると思って下さい。
その電線に電気が流れることで心臓は動きます。
心臓の右側の方にいく電線が右脚、左側の方にいく電線が左脚と呼ばれます。
左脚と呼ばれる電線に問題がある事を、左脚ブロックと言います。
上述のように、さらに細かく分類されます。
不完全左脚ブロック、完全左脚ブロックなどで検討される精密検査とは?
- 安静心電図検査
- 胸部レントゲン検査
- 心臓超音波検査
- 冠動脈造影CT検査
- ホルター心電図検査
- 血液検査
- 【入院】心臓カテーテル検査
- その他
なお、ここでご紹介したすべての検査が必ずしも全員に必要というわけではありません。
検査ごとに方法は異なりますが、目的が重なるものや、診断補助として併用されることが多い検査もあります。
このほかにも、心臓を詳しく調べるための検査にはさまざまな種類があり、症状の有無、年齢、生活習慣、既往歴(持病)などの背景に応じて、医師が総合的に判断し、適切な検査が選ばれます。
心配なことがある場合は、無理に自己判断せず、循環器内科など専門医による診察を受けて相談することが大切です。
安静心電図検査
- 所要時間: 1分程度
- 自己負担額: 約130円 ~ 400円(自己負担割合によります)
健康診断でも実施される基本的な検査ですが、タイミングを変えて再度測定することで、波形の変化や再現性を確認します。
検査当日に、結果説明が可能となります。
胸部レントゲン検査
- 所要時間:約5分
- 費用目安:約150円〜500円(自己負担割合によります)
胸部のX線撮影によって、心臓の大きさや形、肺の状態などを確認できます。
簡便で広く行われている検査で、心不全の有無や肺の病気の除外にも役立ちます。
結果説明は当日中が一般的です。
心臓超音波検査(心エコー)
- 所要時間: 20分程度
- 自己負担額: 約880円 ~ 2,800円(自己負担割合によります)
左胸に機器をあてて、心臓の動きや筋肉の状態、弁の異常などを動画で確認します。
放射線を使わず、体に害がない安全な検査です。検査当日に、結果説明が可能です。
冠動脈造影CT検査
- 所要時間: 20分程度
- 自己負担額: 約3,000円 ~ 9,200円(自己負担割合によります)
点滴注射で造影剤を使用しながら、CTで心臓を栄養する冠動脈が狭くなっていないかを調べます。
造影剤の使用により、腎機能に不安がある方、息止めが難しい方などには注意が必要です。
解析に時間を要します。
前後の点滴注射もあり、検査当日に結果を聞かれる場合、3時間程度かかります。
ホルター心電図検査
- 所要時間: 1日程度
- 自己負担額: 約1,750円 ~ 5,400円(自己負担割合によります)
日常生活の中で脈の乱れがどの程度出ているかを評価します。
シャワーが可能な機種もありますが、湯船に入るのは難しい場合が多いです。
結果説明までに数日かかります。
血液検査
- 所要時間: 3分程度
- 自己負担額: 約1,200円 ~ 3,600円(自己負担割合によります)
採血により血液を調べます。
心臓への負荷やホルモン異常、電解質バランスなどを調べます。
結果説明まで、当日 ~ 1週間程度後と血液検査項目により幅があります。
【入院】心臓カテーテル検査
医師の診察や、外来での精密検査の結果、また症状によっては外来精密検査を経ずに、心臓カテーテル検査が必要となる事があります。
より詳しく心臓の血管を評価するための検査で、多くの場合は入院で行われます。
局所麻酔のうえ、カテーテルという細い管を動脈から心臓に挿入し、造影剤で血管の状態を確認します。
入院期間や施設の体制によって費用や時間が大きく異なります。
※本記事に記載している所要時間や費用は、あくまで一般的な目安です。
実際には、受診される医療機関の方針や、保険の負担割合などによって異なる場合があります。
詳しくは、受診予定の医療機関にご確認ください。
不完全左脚ブロック、左脚ブロックなどで考えられる疾患、原因、状態など

・心筋梗塞
心臓を栄養している動脈(冠動脈)が閉塞してしまう病気です。
心不全や、突然死の原因となります。
梗塞部位により、心電図検査上、右脚ブロックや左脚ブロックを呈する事があります。
・心筋症
心臓ポンプの筋肉に、異常が生じる病気です。
心不全や、突然死の原因となります。
心筋の障害部位により、心電図検査にて左脚ブロックを示す場合があります。
・心臓弁膜症
心臓の中には弁という、開放したり、閉鎖したりする事で、血流を制御する構造物があります。
狭窄症や閉鎖不全症(逆流症)による心室の圧負荷や容量負荷により、左脚ブロックを示す事があります。
・健常者
心臓疾患含め、特に基礎疾患の無い方でも左脚ブロックを示す場合があります。
しかしながら左脚ブロック例では、なにかしらの基礎疾患を有する場合が多く、健常例は稀とされています。
心電図の波形や左脚ブロックの分類について、より専門的な内容です
左脚ブロックは、心電図波形の異常となります。
心臓は、右心房にある洞結節より生じた電気刺激が、房室結節を介して心室に伝わります。
心室に伝わった電気的興奮はヒス束、右脚、左脚と呼ばれる伝導路を経由して伝わり、心室を収縮させます。
左脚の興奮伝導時間の延長や、伝導が途絶した状態を、左脚ブロックといいます。
個別の左脚ブロック型の詳細解説
・不完全左脚ブロック
左脚ブロックにおいて、右心室へは右脚より正常に伝導されますが、左心室や心室中隔の左側へは左脚を通過できず、右心室側からゆっくり伝導されます。
QRS幅が、0.10~0.12秒のものを、不完全左脚ブロックと呼びます。
・完全左脚ブロック
不完全左脚ブロックと類似しますが、QRS波の変化がより顕著で、幅も大きくなります。
・左脚前枝ブロック
左脚が前枝と後枝に分かれており、前枝が障害された状態です。
QRS幅は正常か軽度拡大にとどまり、著明な左軸偏位がみられます。
・左脚後枝ブロック
左脚後枝が障害された状態で、前枝ブロックよりも稀です。
著明な右軸偏位がみられます。
二枝ブロック
・完全右脚ブロック + 左脚前枝ブロック
左脚はさらに、左脚前枝と左脚後枝にわかれます。
左脚前枝のみが障害されたものは、左脚前枝ブロックと呼ばれます。
左脚前枝ブロックは時々、右脚ブロックを合併して、二枝ブロックとなります。
心電図検査にて、右脚ブロック波形(胸部誘導V1において、rsR’パターン、またはM型のQRS波を示すこと、
肢誘導aVL, 胸部誘導V5, V6 などでスラー、もしくは結節を伴った幅の広いS波を示すこと、
および右側胸部誘導V1, V2, V3において2次性のST-T 変化を認める)とともに、
著明な左軸偏位(肢誘導ⅠにおいてR波高 > S波高、かつ肢誘導ⅡにおいてR波高 < S波高、肢誘導aVRにおいてR波高 < S波高(-60°~-90°の事が多い))を認めると、右脚と左室前枝の二枝ブロックと診断されます。
・完全右脚ブロック + 左脚後枝ブロック
左脚はさらに、左脚前枝と左脚後枝にわかれます。
左脚後枝のみが障害されたものは、左脚後枝ブロックと呼ばれます。
左脚後枝ブロックは、しばしば右脚ブロックを合併することがあり、二枝ブロックとなります。
心電図検査にて、右脚ブロック波形(胸部誘導V1において、rsR’パターン、またはM型のQRS波を示すこと、
肢誘導aVL, 胸部誘導V5, V6 などでスラー、もしくは結節を伴った幅の広いS波を示すこと、
および右側胸部誘導V1, V2, V3において2次性のST-T 変化を認める)とともに、著明な右軸偏位(肢誘導aVFにおいてR波高 > S波高、かつ肢誘導aVRにおいてR波高 < S波高(+120°~+180°の事が多い))を認めると、右脚と左室後枝の二枝ブロックと診断されます。
以上となります。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました!
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