🩺 本記事は、「心電図の異常」シリーズの続編です。
心電図の基礎から順に読みたい方は、こちらのまとめページからどうぞ:

QT延長といわれたら|受診前にチェックしたいポイント
健康診断の心電図検査で、QT延長と書かれていて、
- 自覚症状はないけれど、精密検査って受けた方がいいの?
- 何か病気が隠れているの?原因って何?
- 気になる症状もあるし…様子見していても平気かな?
──そうした不安を感じている方には、循環器科または循環器内科を標榜しているクリニックや病院での相談を検討することができます。
✅ 医師の専門性にも着目してみましょう
以下のような資格・所属がある場合、心電図異常やQT延長に関する知識や経験を有していると考えられます:
- 〇〇不整脈(心電図)学会 専門医/認定医/所属
⇒ 心電図や不整脈を専門的に扱っている可能性があります。 - △△循環器学会 専門医/認定医/所属
⇒ 心疾患全般への対応経験があることを示しています。 - ◇◇心臓病学会 専門医/認定医/所属
⇒ より高い専門性を有しているケースもあります。
なお、これらの情報は、多くの医療機関では公式ホームページに掲載されているほか、院内掲示などで確認できる場合もあります。
🩺 QT延長を指摘されたときに専門医に相談するメリット
不整脈に詳しい医師の診察を受けることで、以下のような利点が得られることがあります:
- 必要な精密検査を的確に選定し、過不足のない対応が可能
- 診断から治療方針の検討までがスムーズ
- 総合病院などの高次医療機関と連携できる体制が整っている場合もある
QT延長が病的なものかどうか、経過観察でいいのか、治療が必要かなど、判断が難しいケースでも、専門性の高い医師に相談することで、より適切な方針を検討しやすくなります。
📞 受診前のひと工夫
希望する医師の外来を確実に受けるためには、事前に電話で予約の有無を確認することをおすすめします。
QT延長とは?|ザックリ解説します
心電図には、心臓が1回動いたときの電気の流れが「波形」として記録されます。
この波形には名前があり、**P波・QRS波・T波(時にU波)**などに分かれています。
「QT間隔」とは、QRS波の始まり(Q)からT波の終わりまでの時間のこと。
この間隔が通常より長いと、「QT延長」と診断されます。
QT延長は、心臓の戻る動作(再分極)に時間がかかっている状態で、
不整脈のリスクと関係するため注意が必要です。
QT延長で検討される外来精密検査
心電図で「QT延長」と指摘された場合、必要に応じて以下のような外来検査が考慮されます。

なお、これらすべてが必要というわけではなく、症状や年齢、生活習慣、既往歴などによって、医師が最適な検査を判断します。
安静心電図検査
- 所要時間:約1分
- 費用目安(自己負担):約130円〜400円
- 特徴:短時間で行える基本的な検査。以前の検査結果と比較し、再現性の有無を確認する目的で再検査する場合があります。結果は当日に説明されます。
胸部レントゲン検査
所要時間:約5分
• 費用目安(自己負担):約150円〜500円
• 特徴:胸部のX線撮影によって、心臓の大きさや形、肺の状態などを確認できます
簡便で広く行われている検査で、心不全の有無や肺の病気の除外にも役立ちます。
結果説明は当日中が一般的です。
ホルター心電図検査
- 所要時間:1日(装着時間は24時間が基本)
- 費用目安(自己負担):約1,750円〜5,400円
- 特徴:携帯型心電計を装着し、日常生活の中で不整脈が出ていないか、脈の変化を記録します。入浴は不可、シャワー対応機種もあり。結果説明まで2〜3日程度要します。
血液検査
- 所要時間:約3分
- 費用目安(自己負担):約1,200円〜3,600円
- 特徴:電解質異常や甲状腺ホルモン異常、貧血、心臓への負担の指標などを調べる目的で実施されます。結果説明は当日〜1週間程度。
運動負荷心電図検査
- 所要時間:約30分
- 費用目安(自己負担):約380円〜1,200円
- 特徴:運動(ランニングマシンやバイクなど)を行いながら心電図を記録。不整脈の誘発や波形変化をチェックします。即日結果説明が可能です。
心臓超音波検査(心エコー)
- 所要時間:約20~30分
- 費用目安(自己負担):約880円〜2,800円
- 特徴:胸に超音波プローブを当て、心臓の構造や動きをリアルタイムに確認します。非侵襲的で安全な検査であり、心臓の筋肉や弁の状態を可視化します。当日結果説明が可能です。
補足事項
- 所要時間は検査そのものの目安です。受付・説明・待機時間は含みません。
- 費用は検査単体の自己負担目安です。診察料・処方料などは含まれていません。
- 検査実施体制や費用は医療機関によって異なるため、事前確認をおすすめします。
QT延長 心電図異常で考えられる病気など
QT延長症候群
心電図検査において、QT延長を認め、失神や突然死の原因となる、torsade de pointes(多形性心室頻拍)、心室細動を生じる症候群です。下記のように分類されます。
- 先天性QT症候群
- 遺伝性QT延長症候群
- 特発性QT延長症候群 - 二次性QT延長症候群
- 薬剤によるもの
- 電解質異常
- 徐脈性不整脈
- 心臓疾患
- 中枢神経疾患
- 代謝異常 - その他
ここからは、少し難しい話かもしれません
ご興味のある方は読み進めて下さいね。
QT延長は、心電図波形の異常となります。
QT間隔は、心電図検査において、QRS波の始まりから、T波の終わりまでの時間を示します。正常では、頻脈では短く、徐脈時では延長します。
そのため、正常、異常の判断には心拍数の補正が必要です。心拍数で補正したQTc(Bazettの式)が頻用されます。
しかし、心拍数が高い場合に、Bazettの式を用いると、過剰補正となるため、Fridericiaの補正が用いられる場合もあります。
QT延長症候群の診断には、多くの場合、Schwartzらにより作成された診断基準が用いられます。
この診断基準では、心電図所見、家族歴、既往歴、現症をスコア化し、それらの組み合わせによる評価、診断となります。
心電図所見としては、QTc値、torsade de pointes、T wave alternans、notched T波を3誘導以上で認める、などが重要とされます。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
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