健康診断や学校検診の心電図検査で、QT延長と書かれていて、
- 自覚症状はないけれど、精密検査って受けた方がいいの?
- 何か病気が隠れているの?原因って何?
- 気になる症状もあるし…様子見していても平気かな?
──そうした不安や疑問を感じていませんか?
今回は、QT延長の心電図について
循環器専門医がていねいに解説いたします。
※本記事は診断や治療を目的としたものではありません。
※受診の判断材料や、理解を深める参考としてお使いください。

🩺 本記事は、「心電図の異常」シリーズの続編です。
心電図の基礎から順に読みたい方は、
こちらのまとめページからどうぞ:
心電図のQT延長と自覚症状
心電図にQT延長が見られるときに、
あらわれることがある症状には次のようなものがあります。
- 突然の動機(胸のドキドキ)
- めまい
- 一時的に意識を失いかける
- 失神する
- 息苦しさ
- 胸の違和感
これらの自覚症状は、QT延長が原因で、
「心室性不整脈(しんしつせいふせいみゃく)」と呼ばれる、
危険なリズム異常が起きたときに感じることがあります。
ただし、多くの方は症状がまったくないまま、
健康診断や学校検診などで偶然見つかることも多いです。
自覚症状がなくても、
「QT延長」と指摘された場合には
念のため循環器内科・循環器科に
受診、相談されることをおすすめします。
特に、家族に突然死の経験がある方や、
薬の副作用が心配な方は注意が必要です。
QT延長の心電図結果から考えられる原因など
QT延長症候群
心電図検査において、QT延長を認め、
失神や突然死の原因となる
torsade de pointes(多形性心室頻拍)、
心室細動を生じる症候群です。
下記のように分類されます。
- 先天性QT症候群
 - 遺伝性QT延長症候群
 - 特発性QT延長症候群
- 二次性QT延長症候群
 - 薬剤によるもの
 - 電解質異常
 - 徐脈性不整脈
 - 心臓疾患
 - 中枢神経疾患
 - 代謝異常
- その他
QT延長とは?|心電図をザックリ解説します
心電図には、心臓が1回動いたときの
電気の流れが「波形」として記録されます。
この波形には名前があり、
P波・QRS波・T波(時にU波)などに分かれています。
「QT間隔」とは、QRS波の始まり(Q)から
T波の終わりまでの時間のことです。
この間隔が通常より長いと
「QT延長」と診断されます。
QT延長は心臓の戻る動作(再分極)に
時間がかかっている状態で、
不整脈のリスクと関係するため注意が必要です。
健康診断の心電図、QT延長で受診前のチェックポイント
気になる症状があったり、
ご不安を抱えている方は、
「循環器科」「循環器内科」を標榜している
クリニックや病院での相談を検討してみてくださいね。
医師の専門性にも着目してみましょう
以下のような資格・所属がある場合、
心電図異常やQT延長に関する
知識や経験を有していると考えられます:
- 〇〇不整脈(心電図)学会 専門医/認定医/所属
 ⇒ 心電図や不整脈を専門的に扱っている可能性があります。
- △△循環器学会 専門医/認定医/所属
 ⇒ 心疾患全般への対応経験があることを示しています。
- ◇◇心臓病学会 専門医/認定医/所属
 ⇒ より高い専門性を有しているケースもあります。
なお、これらの情報は、
多くの医療機関では公式ホームページに掲載されているほか、
院内掲示などで確認できる場合もあります。
🩺 健康診断などでQT延長を指摘、専門医に相談するメリット
不整脈に詳しい医師の診察を受けることで、
以下のような利点が得られることがあります:
- 必要な精密検査を的確に選定し、過不足のない対応が可能
- 診断から治療方針の検討までがスムーズ
- 総合病院などの高次医療機関と連携できる体制が整っている場合もある
判断が難しいケースでも
専門性の高い医師に相談することで、
より適切な方針を検討しやすくなります。
📞 受診前のひと工夫
希望する医師の外来を確実に受けるためには、
事前に電話で予約の有無を確認することをおすすめします。
心電図、QT延長|受診後の検査や治療への流れ
健康診断や学校検診で
「QT延長」の心電図を言われると
「ここからどうなっていくの?」
と気になると思います。
まずは、お近くで循環器内科・循環器科を標榜する
クリニックや医院への受診をご検討ください。
受診後の流れについて
医師の診察のうえで、心電図の「QT延長」が
- 本当に心配な心電図異常か
- 様子を見ていいものか
といった判断のため、
当日〜2週間程度以内に、外来で出来る追加検査の
提案を受けるのが一般的です。
※個々の検査については、後のセクションで解説いたします。
検査結果が出た後の主なパターン
診察や検査結果に基づいて、
その後の方針が決まります。
1. 経過観察となるケース
軽いもの:
「様子をみてよいでしょう。
困った症状などがあれば、またご来院ください。」
念のため:
「○ヵ月後位に再度受診してください。
定期的に確認しましょう。」
頓服の相談:
「困った症状などが出たときのため、
必要に応じてお薬を処方いたします。」
万一に備えて:
「もし、△△の様な症状が出たら、
救急をふくめ、急ぎで医療機関を受診してください。」
2. お薬による治療が始まるケース
診察や検査の結果、医師の判断で
不整脈を整えたり、心臓に負担をかけないようにする
お薬が処方され、定期通院となる場合もあります。
3. 大きな病院への紹介となるケース
より精密な検査や、
お身体に一定上の負担がかかる治療が必要と
判断された場合には大学病院、
急性期総合病院、専門病院などへの紹介が行われます。
緊急対応が必要なケース(まれ)
重大な心疾患や
危険な不整脈が疑われる場合は、
当日中に紹介状を持っての受診を
勧められることがあります。
※場合によっては、救急搬送となることもあります。
紹介予約による検査~治療
CT・MRI・心臓電気生理学的検査(EPS)、
心臓ペースメーカーといった、
より高度な検査や治療が必要な場合には
事前予約での紹介受診となります。
最初から大病院を受診しても構いませんが、
必ずしも効率的とは限りません。
総合病院は初診時に紹介状が必要であったり
専門外来の予約が取りづらく、
待ち時間や費用が多くかかることもあります。
一方で、地域のクリニックや医院では、
比較的早く診てもらえるうえ
必要な場合、大きな病院への紹介状を
書いてもらえる仕組み「病診連携」があります。
そのため、まずは初期評価を近くの医療機関で受け、
必要に応じて大きな病院などへ紹介してもらう流れが、
結果的にスムーズなケースが多いです。
自己判断せず、専門科の診断を
心電図の異常と聞くと、
つい重い病気を想像してしまうかもしれません。
実際は「診察と検査を受けてみたら様子見になった」
というケースもあり、様々ですが、
心臓は命に直結する大切な部分です。
専門医などの診察や検査を
積極的に受けることがお勧めです。
不安を一人で抱えず、
ご自身の心臓の状態を知ることが
安心につながります。
QT延長の心電図で検討される外来精密検査
心電図で「QT延長」と指摘された場合、
必要に応じて以下のような外来検査が考慮されます。

なお、これらすべてが必要というわけではなく、
症状や年齢、生活習慣、既往歴などによって、医師が最適な検査を判断します。
安静心電図検査
- 所要時間:約1分
- 費用目安(自己負担):約130円〜400円
短時間で行える基本的な検査。
以前の検査結果と比較し、
再現性の有無を確認する目的で再検査する場合があります。
結果は当日に説明されます。
胸部レントゲン検査
- 所要時間:約5分
- 費用目安(自己負担):約150円〜500円
胸部のX線撮影によって、心臓の大きさや形、
肺の状態などを確認できます。
簡便で広く行われている検査で、
心不全の有無や肺の病気の除外にも役立ちます。
結果説明は当日中が一般的です。
ホルター心電図検査
- 所要時間:1日(装着時間は24時間が基本)
- 費用目安(自己負担):約1,750円〜5,400円
携帯型心電計を装着し、日常生活の中で不整脈が出ていないか、
脈の変化を記録します。
入浴は不可、シャワー対応機種もあり。
結果説明まで2〜3日程度要します。
血液検査
- 所要時間:約3分
- 費用目安(自己負担):約1,200円〜3,600円
電解質異常や甲状腺ホルモン異常、貧血、
心臓への負担の指標などを調べる目的で実施されます。
結果説明は当日〜1週間程度。
運動負荷心電図検査
- 所要時間:約30分
- 費用目安(自己負担):約380円〜1,200円
運動(ランニングマシンやバイクなど)を行いながら心電図を記録。
不整脈の誘発や波形変化をチェックします。
即日結果説明が可能です。
心臓超音波検査(心エコー)
- 所要時間:約20~30分
- 費用目安(自己負担):約880円〜2,800円
胸に超音波プローブを当て、
心臓の構造や動きをリアルタイムに確認します。
非侵襲的で安全な検査であり、
心臓の筋肉や弁の状態を可視化します。
当日結果説明が可能です。
補足事項
- 所要時間は検査そのものの目安です。
- 受付・説明・待機時間は含みません。
- 費用は検査単体の自己負担目安です。
- 診察料・処方料などは含まれていません。
- 検査実施体制や費用は医療機関によって異なります。
- 事前確認をおすすめします。
スマートウォッチ心電図でQT延長はわかる?
スマートウォッチ心電図で記録できるのは脈の
「不規則性」、「速い遅い」といった
リズム異常の一部に限られます。
そのため、QT延長のような波形異常を
スマートウォッチで判定することはできません。
QT延長の判定には、
病院・クリニックで行う12誘導心電図を要します。
スマートウォッチ心電図は
「脈のリズムチェック」に役立つと考え、
波形異常の確認には医療機関受診が必要となります。
※執筆時点での情報をもとにしています。
※スマートウォッチの機能や医療機器認定は日々アップデートされていますので、
 最新情報はメーカーや公式発表をご確認ください。
QT延長|心電図の見方や基準など
ここからは、少し難しい話かもしれません。
ご興味のある方は読み進めて下さいね。
QT延長は、心電図波形の異常となります。
QT間隔は、心電図検査において、QRS波の始まりから、
T波の終わりまでの時間を示します。
正常では、頻脈では短く、徐脈時では延長します。
そのため、正常、異常の判断には心拍数の補正が必要です。
心拍数で補正したQTc(Bazettの式)が頻用されます。
しかし、心拍数が高い場合に、Bazettの式を用いると、
過剰補正となるため、Fridericiaの補正が用いられる場合もあります。
QT延長症候群の診断には、多くの場合、
Schwartzらにより作成された診断基準が用いられます。
この診断基準では、心電図所見、家族歴、既往歴、現症をスコア化し、
それらの組み合わせによる評価、診断となります。
心電図所見としては、QTc値、torsade de pointes、T wave alternans、
notched T波を3誘導以上で認める、などが重要とされます。
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以上となります。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

