健康診断や学校検診の心電図結果でPQ(PR)延長と書かれていたら、
驚いたり不安になったりしますよね。
「原因はなに?」
「自覚症状はないけど治療が必要なの?」
「受診の基準はあるの?」
と心配される方も多いのではないでしょうか。
今回は、PQ(PR)延長とは何か、放っておいてもよいのか、
病院に行くべきかどうか、また判定の基準などを、
わかりやすく解説していきます。

本ページは下記記事の続きとして書いています。
よろしければ、最初からご覧になってください。
健康診断の心電図、PQ(PR)延長は放っておいてもいいの?
健康診断でたまたまPQ(PR)延長が見つかり、
自覚症状もなく、他に異常もない場合は、
特に問題になることはほとんどありません。
ですが、心電図の変化は体調やストレス、
加齢などの原因で変化することがあります。
そのため、気になる場合は一度専門医の診察を受け、
「問題ないPQ(PR)延長」なのか、「注意が必要なサイン」なのかを、
確認しておくと安心です。
治療は必要?何科を受診すれば?
自覚症状がない場合、基本的には治療の必要はありません。
ただし、以下のようなケースでは、
循環器内科(または循環器科)の受診をおすすめします:
- 胸がドキドキしたり、息切れを感じる
- めまいや失神を起こしたことがある
- 心臓の病気がある、または指摘されたことがある
- 家族に心臓突然死や不整脈の人がいる
これらの自覚症状があるときは、
念のため精密検査を受けておいた方が安心です。
どんな検査をするの?
受診すると医師と相談の上、
次のような検査が行われることがあります:
- 安静時心電図(健診と同じ)
- ホルター心電図(24時間心電図):日常生活中の心電図を記録
- 心臓超音波検査(心エコー):心臓の形や動きをチェック
- 血液検査(甲状腺など):電気の流れに影響を与える病気を調べる
- 飲んでいる薬剤のチェック:薬剤が原因の場合もあり
これらは比較的簡単な検査で、外来で行えるものばかりです。
不安な場合は、専門医に相談を
健康診断や学校検診の結果は、
あなたの体が送ってくれる「小さなサイン」かもしれません。
怖がりすぎず、放置しすぎず、適切な対応を心がけてくださいね。
心電図のPQ(PR)間隔とは?
心電図の波形はギザギザしていますが、
実は各ギザギザに、~波など名前がついています。
PQ(PR)間隔とは、心電図のギザギザのP波とQ波(R波)のあいだの時間を指します。
これは、心臓の「電気信号」が、
心房(心臓の上の部屋)から心室(下の部屋)に伝わるスピードを表しているんですね。
正常なPQ(PR)間隔の基準は 0.12〜0.20秒 程度(つまり120〜200ミリ秒)とされています。
PQ(PR)延長の心電図、定義や基準について
PQ(PR)延長とは、
心房(心臓の上の部屋)から心室(下の部屋)への電気信号の伝わり方が、
通常よりゆっくりになっている状態を指します。
PQ(PR)延長の定義
通常、PQ(PR)間隔は 0.12〜0.20秒以内が正常とされており、
0.20秒以上になると「PQ(PR)延長」と定義されます。
ただし、健康診断を行っている施設や解析に使用する機械によっては、
0.22秒以上を「PQ(PR)延長」とする基準を用いる場合もあります。
Ⅰ度房室ブロックとの関係
PQ(PR)延長と非常に似た所見として、
Ⅰ度房室ブロック(Ⅰ度AVブロック)があります。
これは、心臓の電気信号が通る経路のひとつである房室結節(ぼうしつけっせつ)**において、
電気の伝わる速度がやや遅くなっている状態です。
名前に「ブロック(遮断)」とありますが、
実際には電気はきちんと心室まで伝わっています。
PQ(PR)延長とⅠ度房室ブロックはどう違う?
結論から言えば、PQ(PR)延長とⅠ度房室ブロックは、
ほとんど同じ現象と考えて差し支えありません。
どちらも、心房から心室への電気信号の伝達に時間がかかっている状態を指し、
心電図では「PR間隔(PQ間隔)」が長くなっている所見です。
判定基準の違い
- PQ(PR)延長:PQ(PR)間隔が 0.20秒以上
- Ⅰ度房室ブロック:PQ(PR)間隔が 0.25秒以上
ただし、これらの数値は健康診断を行っている施設ごとの基準や定義、
自動解析ソフトの設定によって微妙に異なることがあります。
そのため、同じ心電図でも「PQ(PR)延長」と診断される場合もあれば、
「Ⅰ度房室ブロック」とされる場合もあるのです。
実際の臨床現場では
多くの場合、PQ(PR)延長 ≒ Ⅰ度房室ブロック、
という認識で運用されています。
言葉の違いがあっても、
医学的にはほとんど同義として扱われることが多く、
症状のない軽微な異常として扱われます。
健康な人にも見られることがあります。
PQ(PR)延長やⅠ度房室ブロックは、
必ずしも病気のサインとは限りません。
たとえば、運動習慣のある若い人やアスリートでは、
自律神経が原因でPQ(PR)間隔が長くなることがあり、
これは「生理的なPQ(PR)延長」と呼ばれます。
健康上の問題はなく、
治療の必要もないことがほとんどです。
スマートウォッチ心電図でPQ(PR)延長はわかる?
PQ(PR)延長の判定には、
波形の間隔を正確に測定することが必要になります。
しかし、スマートウォッチ心電図で検出できるのは、
主に不整脈の一部(とくに心房細動)であり、
PQ(PR)延長のような波形の間隔異常を正確に評価することはできません。
「PQ(PR延長)」の診断には、必ず病院やクリニックで行う12誘導心電図が必要です。
スマートウォッチはあくまで、
日常のリズム確認や不整脈チェックに役立つツールと考え、
PQ(PR)間隔の評価には医療機関を受診するようにしましょう。
まとめ
- PQ(PR)延長=心房から心室への電気信号の伝わりがゆっくり
- 問題ないことが多い
- 自覚症状がなければ、経過観察でOKなケースが大半
- 心配なら循環器内科で相談を検討
- 比較的簡単な検査でわかります
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!