健診の心電図結果でPQ(PR)延長と書かれていたら、驚いたり不安になったりしますよね。
「心臓の病気?」
「治療が必要なの?」
と心配される方も多いのではないでしょうか。
今回は、PQ(PR)延長とは何か、放っておいてもよいのか、病院に行くべきかどうかを、やさしく、わかりやすく解説していきます。

※本ページは下記記事の続きとして書いています。
よろしければ、最初からご覧になってください。
PQ(PR)間隔とは?
心電図はギザギザしていますが、実は各ギザギザに、~波など名前がついています。
PQ(PR)間隔とは、心電図のギザギザのP波とQ波(R波)のあいだの時間を指します。
これは、心臓の「電気信号」が心房(心臓の上の部屋)から心室(下の部屋)に伝わるスピードを表しているんですね。
正常なPQ(PR)間隔は 0.12〜0.20秒 程度(つまり120〜200ミリ秒)とされています。
PQ(PR)延長ってどういうこと?
PQ(PR)延長とは、心房(心臓の上の部屋)から心室(下の部屋)への電気信号の伝わり方が通常よりゆっくりになっている状態を指します。
PQ(PR)延長の定義
通常、PQ(PR)間隔は 0.12〜0.20秒以内が正常とされており、0.20秒以上になると「PQ(PR)延長」と診断されます。
ただし、健康診断を行っている施設や解析に使用する機械によっては、0.22秒以上を「PQ(PR)延長」とする基準を用いる場合もあります。
Ⅰ度房室ブロックとの関係
PQ(PR)延長と非常に似た所見として、**Ⅰ度房室ブロック(Ⅰ度AVブロック)があります。
これは、心臓の電気信号が通る経路のひとつである房室結節(ぼうしつけっせつ)**において、電気の伝わる速度がやや遅くなっている状態です。
名前に「ブロック(遮断)」とありますが、実際には電気はきちんと心室まで伝わっています。
PQ(PR)延長とⅠ度房室ブロックはどう違う?
結論から言えば、PQ(PR)延長とⅠ度房室ブロックは、ほとんど同じ現象と考えて差し支えありません。
どちらも、心房から心室への電気信号の伝達に時間がかかっている状態を指し、心電図では「PR間隔(PQ間隔)」が長くなっている所見です。
判定基準の違い
- PQ(PR)延長:PQ(PR)間隔が 0.20秒以上
- Ⅰ度房室ブロック:PQ(PR)間隔が 0.25秒以上
ただし、これらの数値は健康診断を行っている施設ごとの基準や、自動解析ソフトの設定によって微妙に異なることがあります。
そのため、同じ心電図でも「PQ(PR)延長」と診断される場合もあれば、「Ⅰ度房室ブロック」とされる場合もあるのです。
実際の臨床現場では
多くの場合、PQ(PR)延長 ≒ Ⅰ度房室ブロックという認識で運用されています。
言葉の違いがあっても、医学的にはほとんど同義として扱われることが多く、症状のない軽微な異常として扱われます。
健康な人にも見られることがあります
PQ(PR)延長やⅠ度房室ブロックは、必ずしも病気のサインとは限りません。
たとえば、運動習慣のある若い人やアスリートでは、自律神経の影響でPQ(PR)間隔が長くなることがあり、これは「生理的なPQ(PR)延長」と呼ばれます。
健康上の問題はなく、治療の必要もないことがほとんどです。
✅Ⅰ度房室ブロックについて詳しくはこちら
治療は必要?何科を受診すれば?
症状がない場合、基本的には治療の必要はありません。
ただし、以下のようなケースでは循環器内科(または循環器科)の受診をおすすめします:
- 胸がドキドキしたり、息切れを感じる
- めまいや失神を起こしたことがある
- 心臓の病気がある、または指摘されたことがある
- 家族に心臓突然死や不整脈の人がいる
これらの症状があるときは、念のため精密検査を受けておいた方が安心です。
どんな検査をするの?
受診すると医師と相談の上、次のような検査が行われることがあります:
- 安静時心電図(健診と同じ)
- ホルター心電図(24時間心電図):日常生活中の心電図を記録
- 心臓超音波検査(心エコー):心臓の形や動きをチェック
- 血液検査(甲状腺など):電気の流れに影響を与える病気を調べる
- 飲んでいるお薬のチェック:お薬が影響している場合もあり
これらは比較的簡単な検査で、外来で行えるものばかりです。
放っておいてもいいの?
健診でたまたまPQ(PR)延長が見つかり、症状もなく、他に異常もない場合は、特に問題になることはほとんどありません。
ですが、心電図の変化は体調やストレス、加齢などでも変化することがあります。
そのため、気になる場合は一度専門医の診察を受け、「問題ないPQ(PR)延長」なのか、「注意が必要なサイン」なのかを確認しておくと安心です。
まとめ
- PQ(PR)延長=心房から心室への電気信号の伝わりがゆっくり
- ほとんどは一度房室ブロックで、問題ないことが多い
- 症状がなければ、経過観察でOKなケースが大半
- 心配なら循環器内科で相談を検討
- 比較的簡単な検査でわかります
不安な場合は、専門医に相談を
健診の結果は、あなたの体が送ってくれる「小さなサイン」かもしれません。
怖がりすぎず、放置しすぎず、適切な対応を心がけてくださいね。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
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