僧帽弁狭窄症(MS)の原因と心電図|左房負荷・心房細動・右軸偏位を解説

僧帽弁狭窄症(Mitral Stenosis:MS)は
僧帽弁の開きが悪くなることで、
左房から左室へ血液が流れにくくなる病気です。

心電図では、病気そのものを直接診断するというより、

など、僧帽弁狭窄症によって生じた
心臓への負担を反映した変化を捉えます。

僧帽弁狭窄症の心電図では、
まず「僧帽弁が狭くなると、どこに負担がかかるのか」
を順番に考えていくことが大切です。

循環器専門医がわかりやすく解説いたします。

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心電図12誘導とハートの模型が置いてあります・

このページは、下記親ページの続編となります。
よろしければ、ご覧ください。

親ページ:心臓病・不整脈から引ける心電図所見まとめ|実践インデックス

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僧帽弁狭窄症(MS)とは?|原因は?

僧帽弁は、左房と左室の間にある弁です。
僧帽弁狭窄症では、僧帽弁が肥厚したり、
石灰化や癒着を起こしたりすることで弁口が狭くなります。

その結果、左房 → 左室
への血液の流れが妨げられます。

👉心臓の構造についてはこちら

👉血液の循環についてはこちら

僧帽弁狭窄症の原因として
代表的なのが、リウマチ熱です。

リウマチ熱は、A群β溶血性連鎖球菌の感染をきっかけとして
心内膜炎や心筋炎などを起こし、

その後遺症として僧帽弁を中心とした
弁膜症を生じることがあります。

以前は小児期に発症し、
再燃を繰り返すことで弁膜症が進行するケースがみられましたが

抗菌薬の普及に伴ってリウマチ熱そのものが減少し
リウマチ性弁膜症も少なくなっています。

僧帽弁狭窄症(MS)がご心配な方は、
循環器内科・循環器科受診をご検討ください。

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僧帽弁閉鎖不全症の心電図についてはこちら

僧帽弁狭窄症の病態を順番に考える

僧帽弁が狭くなると、左房から左室へ
十分に血液を送り出すことができません。

そのため、まず左房の圧が上昇します。
病態の流れを簡単に整理すると、

僧帽弁狭窄

→ 左房圧上昇
→ 左房拡大
→ 左房負荷所見・心房細動

さらに病状が進むと、

肺静脈圧上昇

→ 肺高血圧
→ 右室圧負荷
→ 右軸偏位・右室肥大

という経過をたどります。

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👉血液の循環についてはこちら

また、左房が拡大してくると
心房細動(AF)も起こりやすくなります。

したがって心電図では、
左房負荷 → 心房細動 → 右心系への負荷
という流れを意識すると理解しやすくなります。

👇各心電図所見の一般的な解説はこちら(リンク)

僧帽弁狭窄症の心電図|左房負荷

僧帽弁狭窄症では
左房から左室への血流が障害されるため、
左房圧が高くなり、やがて左房が拡大します。

その結果、
心電図に左房負荷所見が現れることがあります。

Ⅱ誘導でみるP波

Ⅱ誘導では、P波の幅が広くなり、
途中に切れ込みを伴う形になることがあります。

目安となるのは、
P波幅 0.12秒以上(3mm以上)です。

このようなP波は、古くから
僧帽性P波(P mitrale)と呼ばれています。

Q
僧帽性P波をみつけたら、僧帽弁狭窄症だけを考えればいいの?
A

僧帽性P波は僧帽弁狭窄症だけに
みられる所見ではありません。

高血圧や他の弁膜症など
左房に負担がかかる病態でも認められるため
P mitrale=僧帽弁狭窄症と決めつけないことが重要です。

V1誘導のP波にも注目する

左房負荷を評価するときには
胸部誘導V1のP波も重要です。

V1のP波は二相性になることがあり
左房負荷では後半の陰性部分が大きく
幅広くなる傾向があります。

目安は、V1のP波陰性部分の面積が1mm²以上
または陰性部分の幅が0.06秒以上(1.5mm以上)です。

したがって左房負荷は、

  1. Ⅱ誘導でP波幅 0.12秒以上(3mm以上)
  2. V1でP波陰性部分の面積1mm²以上、あるいは幅0.06秒以上

といった所見から考えていきます。

心電図「左房負荷」の一般的な解説はこちら

僧帽弁狭窄症の心電図|心房細動

僧帽弁狭窄症が進行すると左房が拡大し、
心房細動(AF)を合併しやすくなります。

成人の僧帽弁狭窄症では、
心房細動を伴っているケースも少なくありません。

もちろん心房細動自体は
僧帽弁狭窄症以外でもよくみられる不整脈です。

ただし、僧帽弁狭窄症に伴う心房細動では
比較的粗いf波がみられることがあります。

Tips !

中年女性で粗いf波を伴う
心房細動を認めた場合には
背景疾患として僧帽弁狭窄症も考えてみます。

心電図だけを見るのではなく、
「なぜこの患者さんにAFが起きているのか」
と原因を考える視点が大切です。

心房細動についてはこちら

僧帽弁狭窄症の心電図|右室負荷・右室肥大

重症の僧帽弁狭窄症では
左房圧が大きく上昇します。

その影響が肺循環へ伝わると肺高血圧を生じ
今度は右室に強い圧負荷がかかります。

その結果、
右室肥大三尖弁閉鎖不全
を伴うことがあります。

典型的な右室肥大の電位基準を満たすとは限らない

右室肥大の心電図所見としては、

  • V1でR/S>1
  • V1のR波>7mm
  • RV1+SV5またはSV6>11mm

などのvoltage criteriaがあります。

しかし、僧帽弁狭窄症では、
こうした典型的な右室肥大の電位基準を
満たすことは比較的まれです。

心電図「右室肥大」の一般的な解説はこちら

むしろ心電図では、
右軸偏位(RAD)として現れるケースが
多くみられます。

僧帽弁狭窄症の心電図|右軸偏位

僧帽弁狭窄症に伴う右室負荷では、
電気軸が右方向へ向き、+90°~+180°
右軸偏位を示すことがあります。

簡単な見方として、
Ⅰ誘導:R波<S波かつaVF誘導:R波>S波
であれば、右軸偏位を考えます。

重症の僧帽弁狭窄症では、
肺高血圧から右室圧負荷が生じ、

その結果として右軸偏位がみられることがある
という流れを理解しておきましょう。

心電図「右軸偏位」の一般的な解説はこちら

「心房細動+右軸偏位」なら何を考える?

心房細動だけであれば、
日常臨床でもよく遭遇します。

しかし、心房細動+右軸偏位
という組み合わせを認めた場合には

単なる心房細動として終わらせず
背景に右心系への負荷を生じる病気が
ないか考えることが重要です。

この組み合わせから考えたい代表的な病気が、
僧帽弁狭窄症(MS)と心房中隔欠損症(ASD)です。

心電図から基礎疾患を推測する際に
覚えておきたいポイントです。

まとめ

僧帽弁狭窄

→ 左房圧上昇
→ 左房拡大
左房負荷所見・心房細動

さらに病状が進むと

肺静脈圧上昇

→ 肺高血圧
→ 右室圧負荷
右軸偏位右室肥大

僧帽弁狭窄症では。
上記のような変化が起こります。

そのため、心電図を見るときは
個々の波形を丸暗記するよりも、

「左房に負担がかかり、さらに進行すると
肺高血圧を介して右室にも負担が及ぶ」
という病態を頭に置いておくと理解しやすくなります。

特に覚えておきたいのは、

  • Ⅱ誘導の幅広いP波
  • V1のP波終末陰性部分
  • 心房細動
  • 右軸偏位

です。

これらの所見を認めたときには
心電図だけで判断するのではなく、

患者さんの症状や身体所見、
心エコーなどとあわせて
僧帽弁狭窄症の可能性を考えていきます。

僧帽弁狭窄症(MS)を
専門的に診療する診療科は
循環器科・循環器内科となります。

僧帽弁狭窄症(MS)がご心配な方は、
循環器内科・循環器科受診をご検討ください。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

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