- 拡張型心筋症では、どんな心電図所見が出やすいの?
- 胸部誘導は高電位なのに、肢誘導が低電位になるのはなぜ?
- 拡張型心筋症の心電図でみられる異常Q波やST-T異常は、どう考えたらいい?」
拡張型心筋症(DCM)は、
左室を中心に心室が拡大し、
心臓の収縮力が低下する病気です。
左室の拡大や心筋の変性・線維化などにより、
心電図上ではさまざまな変化を示します。
左室肥大・左室拡大所見、肢誘導の低電位差、
異常Q波、ST-T異常、左房負荷、
心房細動、左脚ブロックなどが、代表的な心電図所見です。
なかでも、胸部誘導では高電位なのに、
肢誘導では低電位を示すことがあるのは、
DCMで押さえておきたい特徴のひとつです。
この記事では、循環器専門医が、
左室拡大、低電位差、異常Q波、ST-T異常などを中心に、
拡張型心筋症でみられる心電図所見について、
できるだけわかりやすく解説いたします。
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拡張型心筋症(DCM)とは
拡張型心筋症(Dilated Cardiomyopathy:DCM)は、
左室を中心とした心室の拡大と
心筋収縮力の低下を特徴とする心筋症です。
心筋の変性や線維化などによって
左室収縮機能が低下し、左室が拡大します。
原因が明らかでないものも多い一方で、
遺伝的要因や心筋炎、アルコールなど、
さまざまな原因が関係します。
DCMでは心臓そのものが大きく変化するため、
心電図にもさまざまな異常が現れます。
代表的な所見として、
などがあります。
特徴的なのは、胸部誘導では高電位なのに、
肢誘導では低電位になることがある点です。
拡張型心筋症を専門的に診療する診療科は
循環器科・循環器内科となります。
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左室肥大|拡張型心筋症の心電図
DCMでは左室が著明に拡大するため、
胸部誘導で左室肥大(LVH)を示す
高電位を認めることがあります。
約70%の症例で左室肥大所見を認めるとされ、
・SV1+RV5またはRV6 > 35 mm
あるいは
・RV5またはRV6 > 26 mm
などの所見を示します。
DCMでは必ずしも心筋そのものが
「肥厚」しているわけではありませんが、
心電図上は左室肥大に似た
高電位を示すことがあります。
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左室拡大所見|拡張型心筋症の心電図
著明な左室拡大が起こると、
拡大した左室がV6誘導の電極に近づき、
V6のQRS波、特にR波が高電位となることがあります。
左室拡大所見として、
・RV6 > RV5
または
・V6のQRS波総電位 > V5のQRS波総電位
を認めます。
この所見はDCM症例の約25%に
みられるとされています。
通常はV5付近でR波が最も高くなることが多いため、
V6のR波がV5より大きい場合には、
著明な左室拡大を考える手がかりになります。
肢誘導の低電位差|拡張型心筋症の心電図
DCMの心電図で興味深いのが、
胸部誘導の高電位と肢誘導の低電位が
同時にみられることがある点です。
肢誘導Ⅰ・Ⅱ・ⅢでQRS波の総電位が
5 mm未満の場合、低電位差と判断します。
DCMでは著明な左室拡大によって、
胸部誘導、特にV6では高電位となる一方、
肢誘導では心筋の変性や線維化を反映して
低電位となることがあります。
つまり、
- 胸部誘導:高電位
- 肢誘導:低電位
という、一見すると相反する所見が
同じ心電図の中にみられることがあります。
この特徴を利用した指標が、
RV6/Rmax ≧ 3です。
ここでRmaxとは、
RI・RII・RIIIのうち最も大きいR波を意味します。
つまり、
V6のR波が、肢誘導の最大R波の3倍以上であれば、
DCMを示唆する所見となります。
高血圧や弁膜症による左室肥大、
肥大型心筋症(HCM)との鑑別にも参考になります。
👇各心電図所見の一般的な解説はこちら
異常Q波、R波増高不良|拡張型心筋症の心電図
DCMでは異常Q波を認めることがあります。
異常Q波は約15%にみられ、
特に胸部誘導V1で認められることがあります。
また、R波増高不良を
示すこともあります。
目安として、
・RV3 ≦ 1.5 mmなど、胸部誘導で
R波が十分に増高しない所見を認めます。
DCMで異常Q波が出現すると、
心筋梗塞との鑑別が問題になることがあります。
そのため、「異常Q波=心筋梗塞」と
単純に判断しないことが重要です。
✅心筋梗塞の心電図特徴|時間変化、時系列、梗塞部位推定などまとめ
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ST-T異常|拡張型心筋症の心電図
DCMではST-T異常を
非常に高い頻度で認めます。
代表的なのは、
ST低下、T波の平低化、T波の陰性化
などです。
一方で、典型的な左室肥大でみられるような
strain patternは比較的少ないとされています。
DCMでは心筋の変性・線維化や心室拡大など、
さまざまな要因によって
再分極異常が起こるためです。
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左房負荷と心房細動|拡張型心筋症の心電図
左室収縮機能が低下すると左室拡張末期圧が上昇し、
その影響が左房にも及びます。
そのため、DCMでは
左房負荷所見を認めることがあります。
左房負荷の心電図所見として、
・Ⅱ誘導のP波幅 ≧ 0.12秒(3 mm)
またはV1誘導のP波陰性部分について、
・面積 ≧ 1 mm²
あるいは
・幅 ≧ 0.06秒(1.5 mm)
などが参考になります。
DCM患者で突然脈が不整になった場合などには、
心房細動の出現にも注意が必要です。
左房拡大に伴って心房細動(AF)を
合併することもあるためです。
約20%の症例で認められます。
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左脚ブロック(LBBB)|拡張型心筋症の心電図
DCMでは刺激伝導系にも異常をきたし、
左脚ブロック(LBBB)を認めることがあります。
約20%の症例でみられ、
- V1誘導で幅広いS波
- V6誘導で幅広いR波、M型のQRS波形
など、左脚ブロックに特徴的な波形を示します。
DCMで左脚ブロックを合併すると
左室収縮のタイミングが不均一となる
心室内同期不全を伴うことも重要です。
👇各心電図所見の一般的な解説はこちら
DCMと虚血性心筋障害の鑑別
心筋梗塞を繰り返すなど、
冠動脈疾患によって左室収縮機能が低下し、
心臓がDCMのように拡大することがあります。
これをCMCAD(cardiomyopathic syndrome due to coronary artery disease)として
DCMとは分けて扱っています。
両者は心エコーでも似た状態を示すことがあり、
心電図だけでの鑑別が難しい場合があります。
異常Q波の分布
DCMでも異常Q波を認めることがありますが、
・Ⅱ・Ⅲ・aVF、V2~V4
などに明らかな異常Q波を認める場合には、
心筋梗塞を背景とした冠動脈疾患をより疑います。
V6のR波
DCMでは著明な左室拡大によって
V6のR波が高くなる傾向があります。
目安として、
・RV6 ≧ 15 mm → DCMを示唆
一方、
・RV6 < 15 mm → CMCADを示唆します。
さらに、
・RV6/Rmax ≧ 3もDCMを示唆する所見です。
したがって、胸部誘導のV6が高電位である一方、
肢誘導が比較的低電位であるという組み合わせが、
DCMを考えるうえで一つのポイントになります。
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まとめ
DCMの心電図には一つだけで診断できるような
特異的所見があるわけではありません。
しかし、
- 左室肥大を思わせる胸部誘導の高電位
- RV6 > RV5などの左室拡大所見
- 肢誘導の低電位差
- RV6/Rmax ≧ 3
- 異常Q波・poor R-wave progression
- ST低下、T波の平低化・陰性化
- 左房負荷や心房細動
- 左脚ブロック
といった所見を組み合わせると、
DCMを疑う手がかりになります。
特に覚えておきたいのは、
「胸部誘導では高電位、肢誘導では低電位」
という組み合わせです。
DCMでは心臓が大きく拡大する一方で、
心筋の変性や線維化も進むため、
このような特徴的な心電図所見が現れることがあります。
心電図単独で診断するのではなく、
心エコーなどで左室拡大と左室収縮機能低下を
確認することが重要です。
拡張型心筋症を専門的に診療する診療科は
循環器科・循環器内科となります。
拡張型心筋症がご心配な方は、
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